2010年10月1日金曜日

夜警

転職初日は淡々と過ぎて、不必要に気兼ねや遠慮もなく、かといって失礼もなく、無難に過ぎた。

仕事用パソコンへの専用ソフトのインストールとかのインフラ整備、後は膨大なドキュメントの概観把握で終わった。

支社長に昼飯をおごっていただき、和やかな雰囲気で終えられて、まずはやれやれ。
来週は1週間の宿泊研修があり、本格的な実務始動は再来週からとなる。

何はともあれ、やはり仕事といった拘束がある環境は心地よく、久々に食欲も出て快活に過ごせた。

消防団の夜警当番があたっていたので、19時頃にお先に失礼させていただき、消防団屯所に向かう。

消防団に入ってほぼ1年。明後日は新人消防団員の研修があり、その概要も団長に教えて頂く。

この夜警であるが、1つの分団員の中で居住区による3つの区分があり、それぞれの地域ごとに毎月夜警が割り当てられる。今月は俺の住む居住区の当番であり、消防車に乗って、あのチリンチリンといった音を響かせながら、担当地域の道路を回る。防火への啓蒙活動の一環だ。

少し遅れて行ったので、もう夜警に出発した後であり、俺は屯所で一服できると思っていたが甘かった。

「待ってたぞ! 運転役とっといてあげたぞ。」とガラ悪おやじが俺に言う。

消防車を1回運転したことがあるが、わが分団の消防車はパワステではなく、とにかくハンドルが重い。好奇心を満たす為の運転は1回で十分であり、出来ることなら運転したくなかった。

おまけに、年々鳥目がひどくなり、夜はかなり視力に難点がある。

おまけに、ベテラン団員は俺にわざと狭い道を走らせようとする。俺のビビリを楽しんでいる。そしてそれに応えて遠慮なくビビル俺がいる。

お調子者の俺は、「余裕っす!」と言いながら、3速以上に入れないビビリ運転で走り出した。

すぐに軽い坂道発進の踏み切りがある。俺は一時停止をしっかり無視して坂道発進を避ける。

狭いクランクでは他の同乗団員に「これ無理っしょ?? 落ちるっしょ?」と車幅を確認しながら、「あほ、全然行けるわい!」と罵声を浴びせられながら、「あの~、もう運転席からの絵的には用水に落ちてるんっすけど・・・交代希望っす。」とつぶやきながら、回転数をあげて急発進する。

げらげら笑われる。 それが嬉しくもある。

ほんまに車幅が見えない。地元とはいえ勘で走れるほどよく走っていない道を練り走るのである。

30分程走ったところで、巡回コース1番の難所に差し掛かる。

両側に幅広の排水溝があり、車は軽自動車以外は快適に走れない道、電柱もあって標識もある。

そんな難所で右折した直後に対向車・・・・。

譲り合い命の優しい俺、無意識に車を止め、今苦労して曲がった直後の道を、巻き戻すかのようにバックし出した。

同乗の団員は大うけである。

「道譲る消防車、初めて見たわ。お前だら(富山便で「あほ」の意)か! バックすな!」とガチ笑いで俺の体をピシャピシャする。

俺も何だか嬉しくなって、対向車が俺の前を横切った瞬間に、軽くクラクションを鳴らすつもりで、ウォーニングな轟きをかます。

爆笑はますます大きくなる。

「道譲ってもうたほうが鳴らすのはわかるけど、どこに道を譲ってクラクション鳴らすだらおるねん! おまけに、ブオ~~~ンって押しすぎ!!!」

確かに、俺の人生を振り返って、消防車に道を譲ってもらったり、お礼のクラクションを鳴らしてもらった経験はない。

ますます楽しくなって、適当に車を走らせていたら、警察の検問に遭う。

ひき逃げ事件捜査の警官による聞き込みなのだが、消防団歴が長い団員も、「夜警で警察に止められたの初めてや!!! お前すごい星におるな~。」とまたまた爆笑。

こちら鳥目マックスでポリスを轢きそうになったというのに・・・。

無事に夜警を終えて、22時前に帰宅。

家の中はまっくら! 夜が早い我が家では22時はミッドナイトだ。

久々に外的拘束に包まれた日であったが、気分はいい。

家の2階、高くはない窓から見る1眼レフサイズの夜景は綺麗であり、漆黒の闇に蛍のスカ屁みたいな点々があるだけだったが、充足感と安心感を俺に運んできてくれた。

チリンチリンと夜警の残響を感じながら、程よい疲れを焼酎で癒し、ゆっくりまどろみたい。

タバコは今日も止めれなかった。

火の用心!!

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