2009年3月12日木曜日

泥棒模様

今日のニュース。「転落した泥棒、リハビリ後に逮捕」 は、なかなか笑えた。不謹慎だが微笑ましくもあった。

以下、ヤフーニュースより引用。

「仙台北署は、一昨年秋にマンションの屋上からロープを使って盗みに入ろうとして転落、重傷を負った男の回復を待ち、1年4か月後の11日、建造物侵入の疑いで逮捕したと発表した。逮捕されたのは仙台市青葉区台原、無職部谷(とりや)能之容疑者(54)。発表によると、部谷容疑者は、一昨年10月29日夕から30日未明に、同区二日町の13階建てマンションの屋上に侵入した疑い。屋上の鉄柱にくくりつけた約30メートルのロープをつたって下りていたが、途中の10階付近でロープが切れ、植え込みの上に落下。動けなくなっているところを住人に通報された。部谷容疑者は転落した際に腕や腰の骨を折る約3か月の重傷を負って入院。退院後も1年以上リハビリしていたが、同署は、留置に耐えられるまで回復したとして逮捕した。部谷容疑者は「転落したショックで記憶にない」と容疑を否認しているという」

単なる間抜けな泥棒なのだが、30メートルのロープを使って、盗みに入ろうとする、こやつの盗みにかける意気込みは、なかなかだと思う。屋上からロープをするする降りながら、どこかで物色する予定だったのだろうが、ロープが切れて転落て・・・・。今時マンガでも、こんな滑稽な場面描写はないだろう。

おまけに、リハビリ後の逮捕で、「転落したショックで記憶にない。」って言っているが、「転落した」ことは覚えているみたいだ。

このニュースの何が微笑ましかったかというと、泥棒の身の張り方もそうだが、彼が留置に耐えられるまで逮捕を待ったという警察の姿勢だ。退院した後に、すぐにぶち込めばいいようなもの、きっちり罪を償ってもらうためか、余罪が多い確証があるからだろうか、とにかく気の長い対応である。これだけ待って、配慮した挙句の、「記憶にない。」発言は、なかなか笑える。政治家や官僚が使うと腹が立つが、この泥棒が使うと、なんだか滑稽に感じた。

ところでこの、「泥棒」という言葉の語源が気になり、検索してみたのだが、同じような疑問を抱いた人は多いみたいで、たくさんヒットした。

いくつか見てみたのだが、諸説あり、確かな語源は確定していないようだ。

「泥」という漢字は、汚いイメージがあるので、盗みを働く奴に冠するにはぴったりな気がする。夜道を徘徊して、屋敷に忍び込む。正門から入るわけではないので、当然、服に汚れも付くだろう。また、家に忍び込んで物色中に、家人が帰ってくることもある。そんな時、昔の泥棒が、くもの巣だらけの床下に潜んでいる場面は、種々の描写がなされていて、容易に場面を思い浮かべることが出来る。

昔の盗人には、「泥」が似合う。弁護する価値のない泥棒であるが、昔は「泥」まみれになって、肉体労働としての盗みがあったような気がする。肉体労働、ある意味、彼らなりに汗水垂らしてブルーカラーワーキングをしていたと言えるかもしれない。

ところが、昭和晩年から平成にかけての泥棒ときたら、「オーシャンズ」みたいな、用意周到、知能犯、指紋も残さなきゃ、汚れもしない盗賊が増えてきた気がする。俺の知人が最近、空き巣に入られているので、盗人を肯定する気もないし、まして盗人に優劣はないが、なんだか昔の盗人は、粋な気がする。

さて、「泥」はなんとなくわかるとして、問題は「棒」だ。

「棒」は、「坊」からきたという説もあるみたいだが、いくら、生臭坊主を蔑む風潮、風説があったにせよ、仏の導き手を盗人にまで格下げするこの説は、個人的には賛同できない。

「警棒」に表れる、武器としての「棒」からの由来と、素直にとっていい気がする。「用心棒」の「棒」も、これと同じ語源の気がする。

盗人が、家人に遭遇した時、一時的に「ポカ!」と叩くために棒を持っていたのだと思う。盗みをしときながら、家人を叩くという暴挙は、決して許されるものではないが、一時的に痛いにせよ、命は奪わない。

今の犯罪は、盗人が強くなり、「強盗」が主流だ。簡単に人を殺める時代だ。また、盗みの理由も、食うことに関する生活の困窮からではなく、分不相応の遊興費欲しさからという動機が殆どだ。

それに盗人自体が、盗みの行為にすらも労力を払わない。すぐにナイフをちらつかせたり、チャカを取り出したりする。衝動的な犯行が多い。

冒頭の犯人、30メートルのロープを用意しているところから見ても、それなりに労力を注いでいる。注ぐ対象はおかしいが、危険を冒して、汚れ作業をする点では、現代の「泥棒」だと思う。

間抜けな泥棒と、彼に、最大限の留置期間を設けるために配慮した警察対応も含め、このニュースの盗人模様が、何だか平和に思えるのは、現代の荒んだ模様を映している気がする。色はもちろん、泥模様である。

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