わが塾の、1学期の授業は終了。30日から夏期講習に入る。2期目の夏期講習だ。
昨年も教材は全て手作りで、全て力作という自己評価なのだが、今年はさらに改定を加えて作っている。
受験学年の教材は、どうしても受験までの日数があるため独創性を発揮するのは授業中の講師力による、「間に」頼らざるを得ない。教材は、pattern practice中心のスパルタ方式になる。これは仕方がないので、入試への優先順位と先々のことを考えた単元を網羅したプリント作成を心がけている。
だが、受験学年以外の教材、中でも小学生、中1、中2の国語教材はめちゃくちゃ凝っている。
国語の授業が面白くないのは、題材文の解説を板書しながら解説一辺倒になりがちだからだと思う。面白くないわりに、文章を読み解く力が育たない。
小説であれば、行動と心情の描写を通して、そこからわかる性格を表にして解説し、ノートに取らせる形の従来からの授業・・・。
例えば、「坊ちゃん」であれば、
行動・心情描写 性格
「母が死ぬ二、三日前、台所で宙返り 「どことなく乱暴で向こうみずだ。」
してあばら骨を打つ。」
「父が勘当すると言ったので仕方がないと 「こだわりがなく、くよくよしていない。」
、そのつもりになっている。」
こういった板書をくり返しながら、「坊ちゃん」の性格を解説し、押し付けていく形態だ。
この形態自体が悪いというわけではないのだが、これが機能するためには、聞き手の高い
集中力が必要とされる。そして皮肉なことに、高い集中力を持っている子は、こんな陳腐
な解説を必要としない。感覚で理解できる部分を無理やり解説されて、人文系の学問への
薄っぺらさを感じてしまう結果にもなる。
昨年から中1、中2には、解説をほとんどせずに、ひたすら思考させて言葉を紡ぐ作業をさせている。
例えば、小説ならば、
①原文を読ませる。 ②原文中の出来事を箇条書きにしたもの、図や絵でまとめたものを配布する。 ③ ②のプリントだけを見ながら(原文は見させない)、原文を再現させる。
④原文再現の際に、心情描写を自由に入れさせ、出来事以外の縛りをいれない。
こうして小説文(800字くらい)を1時限で作らせ、2時限目に、今度は各自が作った文章に線を引いて(線を引くところは指定する)、独自の問題と答えと解説を作らせる。時間があれば各自の問題をリストアップして全員で解かせる。
俺の役目は、彼らが作った問題と解答にいちゃもんをつけることぐらいだ。
なぜ、その解答になるのか? 別の部分でも解答になるのではないか? 種々の難癖をつけながら、問題作成者として子供たちは、設問に科学性を意識するようになる。
ある文章の描写で「工事現場がやかましい」があったとする。そして最後には、「工事現場は静まり返っていた。」に変化しているとする。
すると、後半の工事現場描写に線を引いて設問を作らせる。「工事現場は静まり返っていた。とありますが、これが暗示している主人公の気持ちを説明したものとして適切なものをア~エの中から1つ選びなさい。」 ア~エの作成を生徒に委ねる。
この問題の正答には、主人公の気持ちが「落ち着きを取り戻した」といった文句が必要になる。なぜなら、情景描写が「動から静」に変化すること、それが心情変化とリンクしているからだ。
実際の読者の感じ方はどうでもよい。色々感じたらよい。ところが、国語が科学であるためには、こういった情景と心情のリンクが必要だ。悲しいがそうしないと設問設定は不可能になる。
これを一方的に教授したのでは、先にも述べたように、人文学的興味を失わせるので、自分で作らせて発見させることで、優れた文章が細かな部分でリンクし、暗喩し、風刺がある過程を無意識に体感してもらえると思う。
「国語は曖昧だ。」という不信感を払拭すると同時に、プロの文章が好き嫌いは別として、いかに、細部にまでこまかく整合性があるか(仮に後付けであったにせよ)を理解してもらい、文章自体への興味を喚起することが最終的な目標だ。
この過程を決められた時間で行うには、舵取り手である講師の実力が必要になる。残念ながら、この業界に入って2、3年はそれが出来るレベルに俺はなく、ずっと平均的な授業をキャラで補ってきたが、昨年から導入し、何とか機能することがわかってきた。
今年はさらに、図や絵などにも工夫をこらし、目を引く面白い教材が出来た。夏期講習から2学期に連動させて行いたい。
読書は自由なものである。整合性がない文章のほうが俺は好きである。科学の限界、ばかばかしさも俺は感じている。
だが、読書ビギナーの子供たちが、言語の素地をつける過程で、1度、科学的であることを無意識に体感してもらうことは大事だと思う。俺個人の価値観を押し付けるのが教育ではない。科学的な読書を身につけたあと、大人になったら自由なスタンスで読書し、言葉と触れ合えばよいと思う。
国語教育から読書スタンスへ・・・。 主旨が逸れた。非科学的に終わる。
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