2009年1月7日水曜日

異論混入

まだこんなしょぼいことをする奴がいるみたいだ。今日のヤフーニュースから。

「「料理に異物が入っていた」とうそをついて金をだまし取ったとして、御殿場署は6日、住所不定、無職、志船栄一容疑者(71)を詐欺容疑で逮捕した
。」

こやつ、自分で唇をかんで出血させたらしい。そして、偽造した医者の領収書を用意して数万円をだましとったらしい。すごく必死さが伝わるが、こんなしょぼいおっさんが71年生きられるというのがすごい。ゴキブリみたいな奴だ。彼の黒くて灰色の人生を聞き取り調査したい衝動にかられた。

飲食店経営者は大変だと改めて思った。この事件は、明らかに栄一君が悪いが、料理への異物混入は、あってはならないという原則はあれども、起こりうることだ。

血が出るような異物は防げるとしても、髪の毛と虫の混入は飲食店の背負うリスクの宿命だと思う。

厨房をいくら清潔にしていたところで、ゴキが目を付けないはずがない。一戸建ての飲食店ならば最大限の努力で防げたとしても、雑居ビルのテナントなどにおいては、自分所だけの心がけで防げるものではない。

髪の毛にしてもそうだ。髪の毛の新陳代謝をなめてはいけない。落下して舞う髪の毛を防ぐのは至難の技だ。高級料理店の料理人はまだいい。山高帽やハイソなかぶりものが似合うからだ。

だが汚いおっさんが料理している美味しい店がある。そして俺はそういう店を愛している。そんなおっさんが、ハイソな帽子や綺麗な調理服を着ていると、何だかこそばくてならない。雑多感が魅力の料理の味からパンチが消えそうな気がする。

俺自身は、異物混入にかなり寛大だ。カウンターから厨房を見ていたら、ゴキブリが這い出てきた器があった。「でっかいゴキやの~。」とゴキに対してはびびったが、その後、その器にだろう(多分)、入れられて出てきたラーメンは、あまり違和感がなく食べられた。指摘したらよかったのだろうが、ちょうどランチ時、俺の横にもたくさん客がいたので、言ってしまうと、ごきげんな贔屓の名店の商いが傾くのではないかと危惧したのだ。なんて心優しい客だろう。

他にも、回鍋肉を作っているフライパンの上をネズミがハードルみたいに飛び越えていったこともあった。でも平気。 なぜならその店は床によくネズミの糞が落ちていたからだ。
慣れていたのだ。あり得ると・・・。 不衛生ではあるが、なま物を供す店ではない。その中華料理屋はむちゃくちゃ美味しかった。汚い店と汚いおやじが作る料理はえてして美味しいことが多い。料理とは本来雑多で猥雑な部分があるのだろう。

中島らもさんの本にあったエピソードだったと思うが、大阪N成の食堂でうどんを食べていたら、底から大きなゴキブリが出てきたことがあったらしい。さすがに店主のおばちゃんにクレームつけたら、「兄ちゃん、若いのに好き嫌いしたらあかんやん。」と何事もなくクレームを却下されたらしい。恐るべしだ。

冒頭の栄一君が、N成のおばちゃんの店でクレームをつけたら、彼は71歳にして初めて得る人生観があっただろう。栄一君にN成の食堂、無料招待券を上げたらどうかと思う。ゴキ汁を飲み干せ!

俺の体験や、中島らもさんの体験は極論として、一般的には飲食店にゴキブリ、ネズミはご法度だろう。多くの店に必ずいるはずなのだが、お客さんには黒と灰色を連想させないようにしなければならないのだから、ほんと大変だと思う。

髪の毛、ゴキ、ネズだけではない。見えない菌とも戦わなければならない。個人的に和食店での食中毒なんかは、ババを引いたみたいなもので、防ぎようがない部分もあるように思う(もちろん食中毒を弁護、肯定しているわけではない)。

生牡蠣、烏賊なんかは、料理人の関せないところで食中毒を起こさせる生き物だ。俺も以前、すし屋で生牡蠣か烏賊で食中毒をくらって病院送りになったが、保健所には言わず、大きなニュースにしなかった。一言、「もれてまうやろ~~~~! 気~つけなはれや」とだけ電話した。

そして、その1週間後に友人を連れてまた食いに行った。ウニとカニと味噌汁をサービスしてくれた。そして、それ以来、生食には不向きなフライ用の牡蠣を生で食べても何ともならない。美味だ。食中毒を通して、牡蠣に対する免疫が出来たのだ。こうして人は抵抗力を増していく。飲食店が与えてくれたワクチン注射だ。

カイワレ食って、O157やらいう病名が作られるくらい、食す側の抵抗力がなさ過ぎる時代だ。食中毒があったとしても、飲食店ばかりを責めるのは酷だろう。

冒頭の栄一君のしょぼい犯罪について斬るつもりが、いつの間にか飲食店経営者への深い同情文になってしまった。毎度の乱文とはいえ、異論混入だ。免疫をつけて、懲りずに読んで欲しい。

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