2009年1月8日木曜日

使いたくない言葉

「24」を観ていて、ずっと気になっていた言葉があった。ジャック・バウワーをはじめとする現場捜査官が主に使う言葉だ。

本部からの指令が現場捜査官にいく。無線や携帯電話を片手に、ジャック達が“ copy that ”という場面がしょっちゅう出てくる。初めて聞いたときから、耳慣れなかった。初めて聞いた言葉だったのだ。捜査官もの、戦争ものの映画では多く使われている表現かもしれないので、今後いろいろな映画を見る際に、また意識してみたいのだが、とにかく「24」を観るまでは初耳の表現だった。

“ copy that ”が使われる場面は、100%、誰かから指示を受けた後だ。
「了解」という意味のニュアンスで使われているのだが、“O.K”、 “All Right ” 、 “Roger ” という表現以外に、“ copy that ”というのがあることを知らなかった。

“ copy that ”という言葉を何度も聞いているうちに、この言葉の持つ厳しさ、哀しさというものを感じてきた。縦の世界、序列の世界、絶対服従の世界にある軍隊、連邦捜査官ならではの言葉だと感じた。

“ copy  ”は動詞の用法では、「写す」という意味で使われる。コピー機がドキュメントを複写するように、忠実に写し取ることを要求する言葉だ。

“O.K”は、“ all correct”を“oll correct”と書いたことから広まった言葉だが、話しての主観と意思を感じる言葉だ。同じく“All Right ”も、ばりばり意思を感じる言葉だ。

“Roger ”は 通信用語で、“received ”からくる言葉であり、少し事務的な感じもするが、「拝聴しました」みたいな感じであり、意思的には中立な感じがする。

ところが、“ copy that ”はどうだろう? 「あなたのおっしゃられたことを、頭に写しとりました。」という感じで、意思のないロボット的な復唱である。人間性を排して、「受信完了」といったニュアンスを俺は感じてしまう。

おまけに、機密事項を含む伝達がなされる場面においての、“ copy that ”は、いっさいの証拠隠滅、守秘義務をも保証する誓いの言葉に聞こえる。本部からの指示を、証拠の残る紙なんかにメモするのではなく、頭の中に写しとる作業を義務付けられた者だけが使う言葉であると思う。

そういえば、「24」において、犯人の潜む番地や電話番号を、ジャック達捜査官がメモを取るシーンは1度もなかった。結構複雑な住所と分単位の動きを要求される細かい指示があったが、それらを早口で1回聞いただけで、ジャックは“ copy that ”と言う。

ジャックの経歴は、大学卒業後、SWATやデルタ部隊を経てのCTU入りだ。アメリカ陸軍経験豊富な経歴だ。

同じく“ copy that ”を使ったカーティスも、湾岸戦争で部下を率いる立場のプロ軍人という経歴の持ち主だ。

自分の意思を排除して、ひたすら国への忠誠を義務付けられた立場にいる人たちならではの言葉である。彼らが辿ることになる根源的な悲哀を、この言葉が上手く表しているような気がしてならない。

非常に悲しい連邦捜査官の運命であるが、ジャックには、どこか人間的な部分も感じる。悲しみを背負いながらも人間であることを放棄していない者だけが持つ、何か意思のようなものを感じる。なぜだろうか?

それは、ジャックが“ copy that ”と返事しながらも、平気でその指令を無視して、自分の尺度による判断をするからだと思う。伝達や指令を写しとるだけではなく、その後自分で思考するからだと思う。

ジャックの判断は、ほとんどの場合正しい。だが、彼を抱える上司にしてみれば、冷や汗ものの事態を彼は次々に引き起こす。無謀で強引でセオリー無視・・・、でも表向きは
“ copy that ”で答える。

全然“ copy that ”してへんやん! とツッコミを入れながら「24」を観ていた。

“ copy that ”にぴったりの対訳は何かとずっと考えていた。でも浮かばない。独特の無機質感を出すには、日本語は温かすぎるのだと思う。

意味合いは若干変わるが、雰囲気的には、「笑っていいとも」でタモリに答える観客の、「そうですね。」や、親に怒られて、「わかったの?」と詰問された子供がしぶしぶ答える、「わかりました。」の無機質感に似ている気がする。

“ copy that ”は個人的には使いたくない言葉である。

2 件のコメント:

ラリー さんのコメント...

あかん、小山さんの声でしか思い浮かばへんo(_ _o;)w

管理猿まえけん さんのコメント...

>ラリーさん

小山さんの声、まだ知らない僕が羨ましいでしょう?(笑)ジャックの反抗的な“copy that”も1度ご体験ください(笑)