2009年1月13日火曜日

外来語・外国語禁止遊び

中2の国語の授業においては、昨年から、あることを試みている。授業中に話す言葉全てにおいて、外来語、外国語を排除するというものだ。1つ使うごとにマイナスポイントが溜まり、1番マイナスポイントが多い子には、別個宿題(筆写)が課されるというものだ。
例外として認められるのは、人名・国名の固有名詞だけである。

もちろん、減点対象者には俺も含まれており、俺のマイナスポイントが1番大きい時も多々ある。気をつけていてもすぐに使ってしまう。そんな時は俺自身が筆写の宿題をするはめになる。生徒用に作った筆写プリント課題を仕上げて、翌週、みんなの前で見せて、「字が汚い」やら、「紛らわしい字がある」やら、種々の裁きと辱めを受けることになる。

授業中の課題文に、こんな文章があったとする。

「薄暗いビルの谷間を通り抜けると、行く手が突然明るくなり、わたしの目に飛び込んできたのは、ファーストフードのまばゆいネオンサインだった。」

上記文章において、「ビル」、「ファーストフード」、「ネオンサイン」は外来語だ。これをそのまま音読したら、それぞれマイナス1ポイントとなってしまう。

生徒と俺はこれを日本語に変換して読まなければならない。5秒以上の沈黙も減点対象となるので大変だ。

「ビル」=「建物」といった、単語と単語の変換で済むものならば簡単だが、「ファーストフード」を瞬時に変換しようとすると、大人でも簡単ではない。

「ファーストフードのまばゆいネオンサインだった」の文章は、

「店頭ですぐ食べたり、持ち帰ったりできる食品や調理済みの食品を売る店の、まばゆい、ある元素が放電している光りだった。」としなければならない。

俺自身は、「ファーストフード」はともかく、「ネオンサイン」を瞬時に変換できる言語能力と知識を持っていない。だから、音読時に、こういう単元に順番が回ってくると、辱めに一歩踏み出すことになる。

だがら、予習もきっちりとやるようになった。

この学習指導方法の意図は、言葉の変換を通して、言葉1つ1つを吟味させることにあり、そうすることにより、語彙数を増やし、豊かな表現力も身につくと思ってやっている。
最初は生徒本位の学習指導方法として考案したのだが、やっているうちに、俺自身が面白くなってきた。

考えてみれば、外国語・外来語を使わない日々はない。朝起きてから寝るまでに、どれだけの日本語以外の言葉を使っているだろうか?と考えると、かなり多い。外来語自体も範疇としては、日本語であるが、これ自体も排して、日々の会話表現を成り立たそうとすると、かなり大変である。

試しに例文を作ってみる。とあるガラ悪親父の1日の再現だ。

【あ~よ~寝た。腹減ったな~、パンは飽きたしUFO食うか。何?朝からUFO食べる人珍しいって? じゃかましい! はよポットの湯をぶちこまんかい、愚妻! テレビもしょうもないニュースばかりやの。 何が「東京の空にズーム・イン!」じゃ。 セレブばっか写しよってからに。 こら、息子! はよ起きてこんかい! パソコンばっかりいじっとるから眠いんじゃい! メールか、ブログかしらんけど、しょうもないことやらんと、わしみたいにベンチプレス100回やってから寝んかい! ほな、行ってくるぞ。ステップ・ワゴンの鍵出したらんかい! スタッドレスタイヤに換えたばっかりやから、俺のスーパードライビングテクニック披露しながら行くわ。 その前に大便や。 こら、便器冷たいやんけ! ウォッシュレットの電源抜くなこら。 冷えるの~。トイレットペーパーもあらへんやんかい! わしに手で拭け言うんかい! ・・・・】

この手のやさぐれ親父はどこにもいるだろう。こやつの会話から、外国語・外来語を排除して表現してみる。

【あ~よ~寝た。腹減ったな~、「小麦粉系を練った食い物」は飽きたし、「未確認飛行物体」食うか。何?朝から「未確認飛行物体」食べる人珍しいって? じゃかましい! はよ「お湯作ったり保温したりする機械」の湯をぶちこまんかい、愚妻! 「映像装置」もしょうもない「新しい情報」ばかりやの。 何が「東京の空に「焦点合わして拡大」」じゃ。 「金持っている有名人」ばっか写しよってからに。 こら、息子! はよ起きてこんかい! 「個人的な電脳機械」ばっかりいじっとるから眠いんじゃい! 「電脳手紙」か、「電脳日記」かしらんけど、しょうもないことやらんと、わしみたいに「長椅子に仰向けになって鉄の上げ下げ」100回やってから寝んかい! ほな、行ってくるぞ。「踏み段ある四輪車」の鍵出したらんかい! 「ぎざぎざ付いた車輪の回りの輪っか」に換えたばっかりやから、俺の「壮絶運転技術」披露しながら行くわ。 その前に大便や。 こら、便器冷たいやんけ! 「便器会社が作った自動尻穴清掃と便器温めを両方してくれる機械」の電源抜くなこら。 冷えるの~。「便所紙」もあらへんやんかい! わしに手で拭け言うんかい! ・・・・】

外来語は恐ろしく生活にシェアを広げている。今やそれなしでは表現を困難にする単語がたくさんある。それらを肯定して今後も使いこなしていくが、たまには、それなしで表現する言語遊びをするのも、日本人の矜持として大切だと思う。

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