2008年4月23日水曜日

バイト履歴①

今年大学に入学した若者と話したのだが、暇だ暇だというので、「バイトしろ!」と言ったのだが、「何していいかわからない。」やら、「どうやって探すの?」と言い出す始末。
「求人誌がヤギに食わすくらいあるやんけ!片っ端からあたらんかい!」とアドバイスした。笑って聞いていた。多分しないだろう・・・。

俺の若かりし時分(この言い方おっさんの定番やな~)は、少なくとも俺の周りでは高校生時代からよくバイトをしたものだ。別に家の生活を助けるといった苦学生としての美談ではなく、単に小遣いが欲しかったのだ。貧困ではないが、子どもに多くの小遣いも与えられない当時、高校生以上、小遣いは自分で稼いだ。LPとやらを買うためには、お年玉がある1月以外はバイトしないと無理だった。

今は高校生からバイトをしているのは、相当少ない気がする。まあ、昔も俺の周囲がたまたましていただけかもしれないが・・。

人生最初のバイトは新聞配達だ。中学卒業後の春休みから1ヶ月半だ。今ほど求人誌がない時代、俺は近くの読売新聞に殴りこみをかけ、「配らしてください。」と直談判した。俺の澄んだ瞳にKOされた店主は即決採用で、翌日から夕刊数百部を配らせてくれた。

ちゃりの前カゴにびっしり、後ろカゴにびっしり、積み込んで配達ルートを回ったが、朝刊と違い、人に会う会う・・・。おまけに家からチャリで10分ほどのところにあった高校の近くまでが配達区域だったので、同級生宅への配達もあった。

なんでだろうか、新聞配達には苦学生と貧困のイメージがあった。かっこつけの俺は、家が貧しく思われることがむちゃくちゃ嫌だった。玄関前でぺちゃくちゃしゃべるおばちゃんが居る時は、配達ルートを変えたりしながら、時差を設けたが、完璧にはかわすことができなかった。大阪のおばちゃんの立ち話は長い。避けきれず手渡し配達をする。

「あらあらご苦労さん、若いのに偉いわね~。」と声をかけてくるおばちゃん、明らかに上から目線だ。クラスの奴が俺を見かけて、「苦労人がんばれ~!」と冷やかしてきたこともあった。オレハビンボウジャナイ・・・。屈辱のつぶやきは、ひらがなの柔らかさがなかった。

雨が降る日は大変だ。シートをかぶせながら配るのだが、ある日、強風にあおられチャリが倒れ、新聞が路上の水溜りに浸かった。泣いた。近くのおばちゃんが電話してくれ、新聞屋の店主が代わりの新聞を持ってきてくれたこともある。怒られはしなかったが、給料の額面に響いた気がする。

5月になり、野球部に正式に入ることになった俺は、時間帯的に無理なのでやめた。週5回働いて、バイト代は1万8千円だった。

俺はジェフ・ベックの「ブロウ・バイ・ブロウ」を買った。別にずっと欲しかったわけではなかったのだが、当時の「ヤングギター」なんかをはじめとする音楽雑誌でよく目にしたからだ。ヘビメタギターリストのインタビューには、「俺が最も影響を受けたのはジェフ・ベックさ。俺は速弾きなんかに興味はなく、一番大切なのはハートを込めることだと思っているんだ。その点ジェフのプレイにはノックアウトされまくりさ。今でも聞いているよ。キッズは速く弾くことよりも、彼のハートを学んで欲しいね。もちろん俺からも学んでくれよ(笑)」と書かれてあった。そのギターリストは速弾きしかしていなかったのだが・・・。しっかり学びなさい君も!

チャリで40分ぐらいこいだところにあるレコード屋で購入して、スヌーピーの紙袋を左手に持ちながら、わき目もふらずに家へ帰り、あほみたいに安っぽい、赤一色のプレーヤーにセット! 流れてくるわ流れてくるわ、ムーディーな調べが・・・。

泣きそうだった。感動したのではない。ジェフのソウルがわからなかったのだ。俺の拙い耳は、直線的なエモーションであるシャウトやリフを欲していたのだが、流れてくるのはエコー感あふれるインストばかり、大金をどぶに捨てたような気がした。

大金の損失は新たな投資で挽回する。ダメな株式トレーダーみたいな発想で、俺は再度レコード屋に行った。

ディープ・パープル「マシン・ヘッド」を買ったのだ。完璧完璧! うなり声を上げるほど感動し、俺はジェフのジャケに唾を吐いた。「お前なんかいらんのじゃ! もうちょいレコード増えたらお前はフリスビーの刑じゃ! 中途半端な長髪しやがって! リッチーのくりくりパーマ見習え!」

ジェフのレコードは幸いにしてフリスビーにはならず、後に友人に売ることになったのだが、ジェェフの名誉のために言っておくと、30を超えてから俺はジェフが好きになった。やっと良さがわかったのだ。大人買いを数枚して今にいたる。吐いた唾を飲み込んだ。

ディープ・パープルで気分は最高、レコードを購入する喜びを知った俺は、給料を全部レコードにつぎ込んだ。
レッド・ツェッペリンの「Ⅳ」も購入した。続けてアイアン・メイデンなんかも買いたかったのだが、サタニックなジャケットをおかんが嫌い、捨てられる危惧があったので、1枚はパラダイス感あふれる、エア・サプライを買った。来日記念版の緑版だ。しょぼかった・・・。後悔しまくりだった。「男は激しくありたい!」エア・サプライにも唾を吐いた。

そう何枚も買えるわけではない。当面は裕福なヘビメタの友人にダビングしてもらうことになった。毎月のカセットテープ代の足しに残りを使う。

今思えば、この当時、駅前のぼろビルでひっそりレンタルレコード屋を経営していたのが、今のツタヤの発祥だったのだ。すごい進歩だ。今ほどレンタルが機能していれば、俺はジェフを買ったりする冒険はしなかっただろう。

同じ頃、俺の親友はカジャ・グー・グーを買って失敗の涙に暮れていた・・・。俺達は互いを嘲笑しあいながら傷を舐めあった。ジェフとカジャ、今でも俺の方がましだったと、ひそかに思っている。グー・グー!

バイトとその給料の使い道、思い出していると楽しくなってきた。数日間連載しようと思う。

1 件のコメント:

管理猿まえけん さんのコメント...

mixiから来た君、コピーおもんないよ!
早くあの世にバキュームされてくださいねww