2009年1月11日日曜日

アフォリズム

高校時代からの友人で双子の猛者がいる。俺は弟のほうと主に仲良くしていたのだが、その兄貴とも交流があった。二人とも太りやすい体質で、弟はガテンでぎりぎりの範疇であったが、兄は、誰が見ても「デブ」レッテルを貼られる肥え方だった。ラジパンダリに似ていた。

話し方はお相撲さんみたいで、ベルトは地面向いてねじまがり、鼻息は荒い。彼の学生服はパツパツで、今にもはち切れそうだった。

すごく温和な人で、強気な弟に対して弱気な兄、いつも緩んだ表情で笑みを垂れ流していて、見ているだけで幸せな気分にさせてくれる人だった。今は越前で大型遊興施設のトップに君臨している。

今でも思い出す度に笑える、この兄貴の悲劇がある。以前に書いたことがあるかもしれないが、記憶が定かでない。もう一度書く。

休み時間にみんなでじゃれ合っていた時、彼がしゃがんだ。彼のパツパツのずぼんがついに破裂した。「パーン!」という音を立てて、前はファスナー下、後ろは尻の割れ目の上部まで、見事に彼のずぼんが裂けた。

人の悲劇が何より楽しい年頃である。その瞬間、俺たちは破裂音にびっくりすると同時に、腹を抱えて笑い出す体制を整えたところだった。彼の尻に視線をロックオンして、笑い声発射寸前の時に、次なる事態が起きた。

ずぼんが裂けて焦った彼が、「うわ!」っと言って立ち上がった。その瞬間、彼は胸を張ったような体勢になったのがいけなかった。分厚い胸板で、もともとはち切れそうな彼のカッターシャツがついにハルマゲドンを迎えた。

俺の目の前に、彼のカッターシャツのボタンが、バチバチと音を立てて数個飛んできた。ロックオンされていたのは俺たちの視線だったのだ。

尻は裂けるし、胸のボタンはほとんど無くなるし・・・。 びっくりを通り越した彼の表情・・・、しばしの沈黙の後に、俺たちは際限なく笑い続けた。生きていてこんなおかしなことはない。俺はマンガみたいな出来事が実際に起こりうることを知った。

こういうのを、「泣き面に蜂」という。「弱り目にたたり目」という。

悪いことが重なる事例は、彼だけに限ったことではない。不思議とタイミングの悪さというのは重なるものだ。バイオリズムか運気か、何だか知らない流れが確かに存在する。上手く表現したことわざ、格言だと思う。

俺は「泣き面にめばちこ」は経験した。幼少時、泣きじゃくって目を掻いていたら、目がばちこした。腫れはなかなかひかなかった。

「弱り目にたたり目」は昨年経験済みだ。緑内障で右目を手術して、その恐怖もいえず、視力もほとんどない状態で、4日後に左目を手術した。文字通り、このことわざを体験している。

今日はついていない日だった。玄関を出ると屋根雪が俺に落ちてきた。ドリフのギャグみたいに、顔面水浸し。俺は腹が立って、落ちてきた固まりを蹴り飛ばした。

駐車場までの10メートルの所で、自分の靴紐を自分で踏んで、軽く転んだ。非常に気分が悪い。

車に乗ればワイパーが間接外れたみたいになって、起動範囲が一定しない。俺は雪かき棒を窓から全面に当てながら運転した。

職場に行く。以前、日参するカラスをしばきあげて、最近は落ち着いていたのだが、久々に黒い群れが俺を待ち構えていた。寒くて退避場所を職場の屋根に求めたのだろう。クソ塗れの路上を俺は踏んでしまった。腹が立った。

大人気ないのだが、俺は本気でカラスに向かって、「こら~~ 、くあ~~!」と声を出した。近隣住民の気配がないのを確認しながら、「くら~~~ くあ~~!」と再び罵声を浴びせた。そして雪の塊を投げつけた。

すると黒い群れは飛び去ったのだが、1匹だけ、図太い奴がいて、すぐに舞い戻ってくる。そして俺の頭上から、口にくわえていたミミズチックな細長い生き物を投下してきやがる。マンガだ。ははは・・・。俺は冒頭の友人を思い出した。

ミミズチックな生き物を間一髪で避けた。凝視するのも気持ち悪いそのブツを、俺は蹴飛ばした。
「踏んだり蹴ったり」だ。

そして、再び「くら~~~、 くあ~~」と奇声を上げながら、近くのホースから水を放水した。

とどめがある。放水したホースを元に戻す時、水圧で制御不能となったホースが、ぐるんぐるんと回りだし、俺の顔面向かって水が飛んできた。自爆だ。見るも無残な俺の顔が、いつものイケメンに戻るまでに、タオル2枚と10分を要した。

こういうのを、「踏んだり、蹴ったり、かぶったり・・・・ラジパンダリ」というのだろう。

格言だ。アフォリズムだ。 

2 件のコメント:

Takabo さんのコメント...

ありがとう、久しぶりに爆笑した~(笑)

管理猿まえけん さんのコメント...

>Takabo

爆笑ありがとう。自分でもおもろい話やと思っててん(笑) 大の大人が一生懸命落ちを考えて書く姿、けなげやろ?(笑)
今週末ランチ、よろぴく!