2007年11月26日月曜日

雑誌について考える

今年ほど音楽雑誌を読まなかった年はないのではないだろうか?と思う。購入したのは、「レココレ」の60年代、70年代の名盤特集号だけであり、立ち読みしたものも、ほとんど記憶にない。
例年なら、「ギターマガジン」や「プレイヤー」、「ヤングギター」「バーン」「ロッキンオンジャパン」等々を欠かさず立ち読みで完読し、購入もした。増刊号みたいなものもたくさん読んだ。しかし、今年は音楽雑誌コーナー自体に立ち寄らなくなった。

また、他のジャンルの雑誌にしても、今年はあまり読まなかった。立ち読みの機会が減った。

今年、よく読んだ雑誌は「文藝春秋」である。去年までも気になる記事は立ち読みで完読していたのだが、購入したことはなかった。今年は隔月くらいで購入した。

雑誌という媒体に対して、俺の中で優劣をつけて、少し構えていた年であったのかもしれない。

「文藝春秋」という雑誌に対して俺は偏見を持っていた。「プレジデント」と並ぶ、社長室の書棚の置物のような、気取った香りを感じていた。地位と名誉を十分に獲得した人が、中途半端な知識欲でタイトルだけを目で追って、気の効いた言葉を盗みながら、インテリかぶれをするための雑誌であったと思っていた。だいたい、広告が高級カバンや高級時計はわかるにしても、高級万年筆や陶器ですぜ!ウイスキーは「山崎」ですわ。ジャックダニエルは白黒でも載りません・・・。
広告を見るたびに吐き気がして、購入をためらっていたのだ。狭い偏見だ。

今でも、上記の見方は半分は正しいと思う。「文藝春秋」を読んで、各界のスーパーエリートの発言をそのまま自説として話している上流階級志向の人はよく目にする。しかし、この雑誌はそういう志向を持った人たちに対して記事を編集しているのであろうから、実によく市場調査されている。雑誌に罪はない。

今年、「文藝春秋」をよく読んだ理由は、「文春文庫」の文庫本で知り合った作品の中に、自分にとっての名著が数多くあったからである。たまたま今年よく知り合っただけであるが、これもタイミングである。また、心なしか、今年の「文藝春秋」は、俗的な週刊誌しか取り上げなかった話題に挑戦していた気がする。
そして、最大の理由は、自分にとっての読みたい興味分野に閉塞感があり、新たなる好奇心の分野がどこかにあるのではないかと思ったことだ。断片的なヒントでも良いから、何か、書棚を見渡す活力となる作家や、研究分野にめぐり合いたかったのである。

「裏社会」「任侠」「マイノリティー」「ジェンダー」「陰謀」といった分野に対しては、ここ15年くらいで、数多くの書籍や実地検分に触れ、好奇心の欲求をだいぶ満たしてきた。知識量としては鼻くそみたいなものであろうが、俺は学者ではない。己の好奇心が満たされればそれでいいのだ。
しかし、それに続く興味分野が持てないでいた。

自分にとって興奮の対象となる1人の作家や、1つの興味分野との出会いはなかなかに来てくれない。

今年は総じて、不作であった。自分が知り合うものが不作に思えた。今まで深く関わらなかった作家もたくさん読んだ。しかし・・・。 そして「文藝春秋」に救いを求めた。

「文藝春秋」の記事は、どれも確かに面白い。1冊を1日で完読せずにはおれない面白さだ。でも、読み終わった後に残るのは、不毛の土地だ。だめだ。

自分の感性が衰えていないかをずっと自問自答していた今年であった。色んな未知の分野があるのに、それに触れるチャンスを逸しているのではないか、または、触れているのに感動を味わう感性がなくなっていて、劇的な出会いを逸していたのではないか、という恐怖感が常にあり、それは、過去のブログでもよく触れている。

知らない分野に触れるために、種々の雑誌や、普段立ち寄らない書籍コーナーに立ち寄ってみるようにしているが、そんな風にしてまで未知なる領域を増やすことが果たして幸せなことであるのかについても迷っていた。

色んな選択肢がある中で、なんで俺は音楽に目覚めて、日の当たらないものに興味をそそられ、今にいたっているのであろうか? 人によってはアニメに夢中になったり、映画に夢中になったり、天体に夢中になったり、歴史に夢中になったり・・・、人間の数だけ興味の分野がある中で、何に魅かれて今を選択しているのであろう??? 

雑誌について考える今日のブログであった。 

雑誌は、下種なものが多い。でも、その時々の出会うべきヒントとなる興味分野が散りばめられているものであると考えるならば、最高の入門書ではないか。エロ写真や記事と「エイズの危機」「性の乱れ批判」を同一にしている週刊誌だって、皇室と芸能界のスキャンダルを同一にパッケージしている週刊誌だって、興味のヒントがあると思えば、読む価値はあるのかもしれない。

手始めに何のコーナーからいこう? そう思って今日はめったに行かない本屋に立ち寄った。「ドアを入って2番目の列を右に行って、その奥の左の雑誌コーナーの下を物色しよう!」

計画は秀逸である。レイアウトが少し違っていたが、だいたい目論見通り、書店を闊歩し、たどり着いた先にあった雑誌は、刺青がたくさん載った雑誌であった。名は明かさないが、結構、固定読者が多そうな雑誌であった。書店のレイアウトを概観すると、エロ本以上、バイク・車雑誌未満の扱いを受けたコーナーに置かれてあった。真面目に読んだ。文様を見た。痺れた。

広告を見た。ファッション広告があった。「2007秋! ヤーコレ」というタイトルで、萬田と文太と健に似た人がモデルで、いかした服を着ていた。ナイスコピーだ!以前にもこのコピーを見たことがあるので、どうやらその世界の定番コピーみたいだ。

興味分野を広げるのは容易ではない。今日の分野は俺の従来の分野だ。しかし、良いコピーがまだ存在していることが嬉しかった。

明日はどこに行こう? 決まらないが、「これヤーコレ!」と思える媒体に出会いたい。センスは二の次である。

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