2008年11月15日土曜日

快気

今日は抜糸の日だった。診察前は、入院した病院の建物を目にすると、震えに近いものがこみあげてきたが、診察中と処置中、自分でもびっくりするくらい落ち着いていられた。

緑内障を患うものにとって最大のドキドキタイム、眼圧測定であるが、なんだか妙な自信があった。お目目がすごくソフトに感じるのだ。先生は、「自分で眼圧はわからない」とおっしゃっていたが、俺は測定する前から、「多分、12くらいですよ。」と言ったら、ほんまに12だった。

緑内障における自覚症状の達人になったわけだ。軽く目を手で押さえただけで、やわらかい数字の微妙なところを感知できるようになった。本来持つ必要のない特殊技能だが、今後のセルフチェックの意味もこめて、俺にとってはありがたい特殊技能を身につけたものだ。眼科に行くのが怖い方がおられたら、俺にご一報を! 軽く手をかざして眼圧数値を測ってあげましょう。(絵的に見たら、怪しい宗教チックだが・・・)

眼圧測定が終わり、点眼薬の打ち合わせをした。1日5回点していた目薬が、前回の診察で3回になり、今回は2回になった。おまけに、点す点眼薬の種類も、3種類から2種類になった。これはかなり嬉しい。

目薬を点し続けるのは、なかなかに面倒くさい。俺は最初、3種類与えられた目薬を、続けて、ポチャン、ポチャン、ポチャンと連続点眼していたのだが、入院中に看護婦にビシっとダメだしされた。おまけに1回につき、目から溢れんばかりの滴をぶち込むものだから、「こんな目薬の減りが早い人はいないですよ。」と言われた。なるほど、溢れた雫が作ったカペカペ文様が俺の顔面に描かれていた。

正しい点眼は、1つの点眼薬を1滴垂らして、1分間目を閉じる。溢れた雫はティッシュでふき取り、次の点眼薬を点すまでに最低5分の間隔を空けるというものだ。

3種類点すとなると、お目目を閉じている間だけで3分間、それが1日数回ある。そして間隔を空けて別の点眼薬を点すので、1日に点眼薬に拘束される時間が、かなり増えることになる。色んな囚われの形態があるが、目薬に囚われるのはアンニュイだ。

元来、フリーダムを欲する俺は、これごときでもかなりのストレスだったのだ。何度か、ノーフューチャー覚悟で、雑な点し方をしてやろうか?と思ったこともあったが、手術の恐怖とを天秤にかけると、俺はフリーダムをあきらめ、点眼薬に囚われの身を選んだ。
今では、点眼のプロだ。2階から目薬もさせる気がする。特殊技能2つ目を手に入れた。

とにかく、点眼回数は減った。次に残るは、本日のメインイベント、白目の抜糸だ。前日ブログでコメントくださった、オオタ氏がおっしゃる通り、「白目の抜糸」という言葉は壮絶だ。普通の人が生涯口にしない単語の配列だ。それを俺はした。かっこいいだろう?

俺は自分の男ぶりに惚れた。手術の恐怖が強烈すぎたせいもあったのだろうか、処置の間をかなり男の子に過ごせたのだ。

まばたきしないように目をロックされた後、針が俺の眼球目掛けて飛んでくる。あれほど強烈な恐怖としてあった目注射が、今日は体硬直にまではいたらない。強くなったものだ。軽く口から泡を吹きそうだったが・・・。

麻酔を打たれた後、微細の引っ掻き棒みたいなものが俺の白目を目指すのがわかったが、それも軽い発汗で済んだ。真冬のサウナ室ぐらいの発汗だ。

その後、白目が糸で引っ張られるような感触があったが、軽く悪寒がする程度で済んだ。
どれもこれも、致死量には至らない。こうして人は刺激を更新していくのだろうと改めて思った。怪奇な体験を経た後の快気なのだ。感慨深い。

明日は、「ほうるもん」ライブだ。長らく沈んでいた俺の魂は、快気に際してあふれんばかりの情熱で満ちている。喜びの涙を滴り流しながら、目でリズムを取って思う存分歌いたい。

0 件のコメント: