2009年2月3日火曜日

相撲界の品格

朝青龍の優勝で、相撲界にも久々に活気が出てきて、個人的に喜んでいたら・・・。

優勝翌日からは、「横綱のガッツポーズがよくない」やら、「モンゴル帰国許せない。」やら、この世界は本当に進歩がない。品格という言葉の意味を更新できていない奴らがご意見番にうじゃうじゃいるものだから、自己矛盾を抱えたまま進歩がない。

表立っては言えないが、根本に、外国人力士に角界を支えてもらっていることに対して、消化できない苛立ちと不満があるようにも思える。

ガッツポーズを安っぽいという価値観をわからないでもない。本来、日本人がもともともっている感情表現の身ぶりではないと思うからだ。粛々と勝利を享受する奥ゆかしさが古来、伝統だったのかもしれない。

それならば、ずっと外国人力士に開放しなければよかったのだ。開放した以上は、いくら帰化しようがしよまいが、その力士の持った素の部分として、噛み付くべきではないと思う。こちらが、それぞれの力士の価値観などを理解してあげればよいと思う。

「ガッツポーズがよくない。」「メンチがよくない。」と思う考え自体は否定しない。ただ、こういった思想の背景が、相撲道という名の偏った品格感を育んできたことに、そろそろ気づいて、対処すべき時期にきていると思う。

しょうもないいちゃもんをつける前に、もっとやるべきことがあるだろう!と思う。

弟子を稽古という名のリンチ状態にする。八百長が定期的に疑惑として上がる。こんな世界に品格があるのだろうか。品格を語りたければ、もっと先に目を向けて改善してから、大いに相撲界の品格を強要したらいいと思う。

種々の問題が露見してきた角界に、ダメ押しのような事件が起こった。日本人相撲力士の大麻吸引事件だ。

昨年も大きく取りざたされた大麻問題であったが、昨年は、外国人力士の大麻吸引ということで、深刻に捉えたふりをしながらも、何か他人事、違う文化がもたらした悪癖の被害者であるかのような、言い逃れに終始していたような気がする角界のご意見番たちであるが、今回は、角界品格の純血、日本人の吸引だ。

個人的には、大麻を吸う人間が角界にいても驚かない。若くして相撲界に入り、食う→寝る→稽古だけを繰り返してきた人たちだ。相撲道に邁進する上で、何か社会人的な資質が欠損したり、身につかなかったりしたまま大きくなる力士がいるのは必然だ。

角界が、品格を大きく語りたいのであれば、このような事件が起こらないための、しっかりとした教育課程から手をつけるべきだ。多くの力士が公的教育を早期に放棄して入ってきているのだから、学校になりかわるだけの、相撲稽古以外の部分でのフォローが必要であったはずだ。

893組織の下足番から首領への道に行く過程と、相撲界はどこか似ている気がする。
稽古という名のリンチが起こるのも納得できる気がする。893組織と同様、一般社会からは閉ざされた集団であろう。

そのような集団でのし上がってきた横綱に対する敬意も持たず、「ガッツポーズ」で噛み付くかと思えば、末端の弟子の教育も出来ていない。どこから手をつけていいかわからないほど、自己矛盾を持った集団だ。なんとかならないか、せめて、幼稚な噛み付きだけはやめて欲しい。

それから、相撲経験者でもないのに、偉そうに訓示をたれる、やくくん達、君ら何もの???

やく君は相撲以外のことへの意見は、時に鋭くて、勇気ある発言も多く感じるのだが、角界の品格に関する意見と、亀田パパに対する意見との温度、思想背景が同じレベルにあるような気がしてならない。

不満だらけの角界だが、俺の好きな尾車親方の昨日の行動には感激した。

弟子が起こしたことに対して、同部屋の弟子達に対して謝罪したという。「迷惑かけてすまん。家宅捜査を受けたりして大変だったろう。」といった謝罪だったらしい。

なかなか出来ることではないと思う。甘すぎるといえば甘いのかもしれないが、日頃接している愛弟子に対して投げかける言葉としては、深い愛を感じる。

いくら監督責任が問われる立場とはいえ、また、十数人の弟子しかいなかったとはいえ、24時間体制で彼らを監視しているわけにはいかない。彼らのプライベートな行動で、大麻吸引があったとしても、尾車親方を責めるのは酷だと思う。

監督者責任を問われても仕方ないと思うのは、実の親だけだと思う(親でも問う必要のない事件もあるが)。

日本は監督者責任追及が得意だ。だから、上司にまで処分が及び、上司が謝罪会見を行うのが世の常だ。そして、監督責任を問われた上司は、世間的には謝罪、部下に対しては訓示を行うのが通例だ。

ところが、親方は、謝罪会見をして、世間に対してわびるのは定番だとしても、部下にもわびた。これがすごいと思う。親方の人間性を如実に表していると思う。

尾車親方の相撲解説が好きだった。解説している時に、本当に楽しそうに話す。心から相撲を愛し、後輩力士に対する敬意と愛情がいつも感じられた。野球界でいえば、掛布さんと同種の清い性質を感じていた。あくまでテレビ越しの主観だが、この親方は、人間的に素晴らしいと、常日頃思っていた。

大麻問題が発覚した日の尾車親方の謝罪会見、涙を見て、俺は感動したが、「役者やのう」といった中傷もあったようだ。

本当に監督責任を言うならば、角界の理事クラスが処分されるのが筋であると思う。ところがそうではない。本来ならば、理事クラスの奴は、親方の無念さを思って、親方、同部屋の力士に対する配慮に労を注ぐべきであると思うのだが、俺の価値観がずれているのか、どうもそうではないらしい。

身内から非行児が出たら、その身内の心中たるや、想像を絶する苦悩の日々だろう。監督者によっては、明らかに監督を放棄していたり、非行を生む素地を自ら用意したりしている人もいるが、尾車親方の場合は、どう考えてもそうではないように思う。

日頃一緒に関わってきて、尾車親方の人柄とかは、多少なりともわかっているであろうに、自らの保身に終始して、人間的な1対1の情も示せない奴らに品格を語る資格はないと思う。今回の騒動の決着自体が、八百長であり、品格とは無縁のものであると思う。

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