2009年2月27日金曜日

医療環境の問題

先週のことだが、同僚が喉頭の疾患で入院したのでお見舞いに行った。公立学校共済組合の総合病院だ。近代的な建物、広い敷地、外観だけ見たら、医療の最先端を走っていそうな病院である。

この病院は、わが住む県の西部に位置し、人口が大して多くはない市にある。だが、車社会の地方生活、アクセスに不便を感じるほどの立地でもないし、公立学校教職員の御用達ということで、さぞ混んでいるものと思っていた。

だが、お見舞いに行くために駐車場に車を止めようとしたのだが、平日の午前診療中時間帯であるにも関わらず、正面入り口に1番近い駐車場に、難なく止められる。たまたまではない。空き空きなのである。

公共バスの乗り入れターミナルや、タクシー乗り場もあるのだが、人の気配はない。ゴーストタウンに迷い込んでしまったかのような薄気味悪さを感じた。

院内に入る。受付、精算所には、まばらな人、それも全員高齢者である。外来病棟から入院患者のいる病棟に向けて歩いていく間、各種診察科の前を通っていくわけだが、綺麗な待合ソファーは、どこも半分以下の着席率、ピンク色の綺麗なソファーが虚しく映る。

看護士と事務員が忙しく動き回り、あちこちで呼び出しが行われ、人の動きが激しい、総合病院のイメージとは、全くもって異なる不気味さである。俺の足音自体が妙に響いて申し訳なくもあり、変な緊張感も抱いた。

エレベーター乗り場の前に、各種掲示物があったので、1つ1つ見ていたのだが、「産婦人科」、「小児科」が当面の間、休診する旨の掲示がなされていた。おまけに、週に1、2日だけの開設科が多く、とてもじゃないが、総合病院と呼べる体制ではない。

心なしか、通り過ぎる事務員にも緊張感がないように思う。廊下で同僚とだらだら話している場面が目に付く。

同僚の入院している階に行き、ナース・ステーションで病室を聞こうとするのだが、目が合っているにも関わらず、奥の方で何か仕事をしたまま、こちらに出てこようともしない。小声で「すみません。」と言ってはみたものの、3人のスタッフから総無視状態であり、面倒くさいので、勝手に病棟内を歩き回る。

病棟は綺麗で清潔である。掃除のおばちゃんだけが、やけくそのような活気を1人演出しているように見えた。

お見舞いをした時に聞いたのだが、案の定、「どうも地元の評判がよくないらしい。」
教職員以外の人は、軒並み、隣町の総合病院に行くらしい。

医者不足が問題視されるなか、何が原因かはわからないが、一度でも評判を落としてしまったら、いくら共済的な総合病院でも、かくも惨めな状態になるものか?と思った。

典型的な悪循環だろう。患者数が少ないと収益が上がらない。上がらないから優秀な医者の新規採用が出来なくなり、休診科も多くなる。当然スタッフに活気はない。俺がナース・ステーションで見た、あのやる気ない看護士には、どんなことがあっても看護して欲しくないと俺自身思った。すると、生涯、個人的にはこの病院に行かないだろう。

建て直しは可能なのだろうか? 

地元の救急医療の受け皿として機能するには、あまりに惨めな状態であり、今後ますます閑散ぶりに拍車がかかるだろうと思う。

特に、産科が休診ということは、地元の妊婦さんたちが、急な陣痛になった時、彼女達は最寄りの総合病院をスルーして、個人病院もしくは、隣町の総合病院まで行かなくてはならないのだろうか?

俺の住む町には、たくさんの産婦人科があり、お産体制は整っている。だが、この総合病院がある市には、よく調べたわけではないが、個人の産婦人科が充実しているとは思えない。他人事ながら心配になった。

医者不足とやたらに叫ばれているが、絶対数の不足以外に、来院数が多い病院と少ない病院の差を均等に埋めることのほうが、差しあたって有効な手立ての気がする。

名医は確かに存在すると思う。だが、外科医のオペ技術に秀でた人に患者が偏るのは仕方がないとしても、その他の科では、いくら触診が優れていたとしても、最終的な診断は検査機器を通して下す。検査機器、治療機器の整備状況だけを見ていたら、特殊な病気や終末医療を除いては、そんなに差はないと思う。総合病院同士の、技量の差異は、実際にはそんなにはないのではないかと思う。

上記の病院の隣町の総合病院は、連日大混雑である。この差は医者の技量の差とはどうしても思えない。それぞれの市町村の総合病院に、均等に医者を配置して、均等な人口配分的な来院数があれば、だいぶ医療環境問題は緩和されると思う。

俺自身が上記の病院で診てもらっていないので、何とも言えないが、先述したような看護士の対応に診られるような、医療以前の人間的な差が、病院格差を生んでいるのではないかと思う。職業人のプロとしての優劣性は、看板が示すものではないが、当たり前の人間性を持たない人の多い場所では、自然と看板も廃っていくような気がした。別に上記の病院を個別に批判しているのではない。

ただ、医療環境の整備は、意外と簡単なスタッフ整備と配置換えで解決できるような気がしたお見舞い模様であった。医者も看護士も、医療界のプロである以前に人間だ。総合病院の格差から、地理的要因だけを考慮して、スタッフの人間力を比較検討してみてほしい。

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