2007年11月24日土曜日

雪国の暮らし

大阪で生まれ育った俺は、12年前に富山に来るまで、スタッドレスタイヤなるものの存在を知らなかった。だいたい、車の免許自体を富山行きが決定する25歳までとらなかったくらいだ。知るはずがない。
バイクで冬場にツーリングする時も、ノーマルタイヤですいすい走っていた。12月に和歌山行きを決した時は、奈良のど田舎で氷点下の気温に見舞われたが、スリップする恐怖を知らずに走っていた。
幸いにして、積雪による通行止めでUターンを余儀なくされたのだが、それがなければ、多分、今頃皮膚のいたるところがズル剥けになっているであろう。

タイヤでスリップ度合いが変わるということ自体に意識がいかなかったのである。

富山に来て初めての冬、スリップの怖さを知らない俺は、積雪50センチはあるであろう深夜に、細い道を走行中、鼻毛を抜いていた。そして、曲がり道に気付き、ハンドルを切ったが、案の定、ブレーキを深く踏み込み、ロックオンされた。

発射されたのは俺の車である。向かう先は「20キロメートル」の速度表示板である。スピード自体は20キロほどしか出ていなかったのであるが、垂直に立っている公共の棒に角度をつけることになった。

正直な俺は、速度表示板を倒したことを警察に自首した。裁きを受けて、留置場に入ることを期待していたが、すぐに帰された。裁きは保険料の金額で済まされた。臭い飯を食うのは容易ではない。

振り返ってみれば、スリップの怖さをしらない、理系的頭脳のないガキんちょに、その身をもって理解する機会を、こんな小さな衝突で味あわせていただいたことを嬉しく思う。

雪道の悲劇を味わった経験はもう一回ある。

ある健康センターの駐車上内に、用水路があったのだが、その用水と駐車場から国道に出る道が交わるところには小さな橋桁がかかっているのだが、その橋桁自体が吹雪で見えなかった。幅が5メートルぐらいの橋桁以外には、地上から10センチほどの突起物しかなかった。

俺は徐行運転で橋桁めがけてロックオンした。しかし、暴発し、橋桁を外し、深さ1メートルくらいの用水に頭から突っ込んだ。車の先が用水の底に到着し、後部が空中に浮いている状態での吊るし上げの刑を3時間ほど食らった。

板金塗装も含めて、修理代は30万くらいかかった。俺が突っ込んだ後に、その用水には、「転落注意」の看板と「アサヒスーパードライ」ののぼりが立ててあった。俺は心で狼煙を上げた。吹雪の中で朝日を拝んだ俺に対する冒涜だ! 「もっと早く揚げんかい!」  怒りは乾かない・・・。

腹いせに、しばらくの間、そこを通りかかる度に、車を止め、立ちション攻撃をくり返した。
野犬に噛まれそうになった。狼みたいな野犬だ。呪わしい・・・。

今でこそ順応したが、雪国の暮らしは奥深い。ちょっと油断をすると、ロックオンされる。飛び出す先は痛い所か、痛みを感じない場所である。後者には行きたくないものだ。

そろそろ寒くなってきたので、タイヤを交換しようと思う。しかし、このスタッドレスタイヤというブツを履くと、極端に燃費が悪くなる。地面を捕らえ過ぎるのだ。雪が降らない通常の地面を走るには、今のガソリン価格は高すぎる。もう少し待とうか?

雪国は都会と比べて、対自然に対して金がかかる。スタッドレスタイヤもしかり、灯油の使用量も然り、融雪装置、アノラック、除雪用のママさんダンプや、スコップ・・・・。

大手の企業では「寒冷地手当て」なるものがあるらしい。ならば、国に物申したい。

雪国に対する特別の減税を検討してくれ! どう考えても、対自然の生活費は都会の人よりもかかる。
「スリップ控除」、「ロックオン控除」、「除雪控除」などを、積雪量に応じて考えて欲しいのだ。

自動車屋などは冬場は修理で儲かるので、一見、控除は要らない気がするが、冬場に車を買い替える人は少数である。トータルではマイナスではなかろうか?

骨粗鬆の老人の骨は、雪が降るたびポキポキ折れる。雪道で、雪に突き刺さっている前衛アートの彫刻のような老人を何度も見たことがある。発見が遅れれば、彼らは文字通り凝固する。雪国の老人に対する「骨折手当て」なるものも必要だ。

真面目に言っている。雪国の暮らしに目を向けて欲しい。

「働けど 働けど わが暮らし ロックオン」 (「まえけん全集」別巻『北の脅威』より引用)

2 件のコメント:

赤ひげtodタカ さんのコメント...

ケンヂ、間違ってるヨ、ソレは。確かに雪による銭の出費は要る、が、雪に拠ってもたらせれる恩を思えば激安や。自然はいつでも大盤振る舞いである。あと雪道の運転は、市場やらの広い場所で30分も練習すればドリフト走行などスグに習得可能でアル。ブレーキも、ロックしたら緩めて又踏み直すちゅー人間ABSと呼ばれる技も20分有ればモノにできる。オモロいよ、雪道。そうそう、あと、雪で凸凹になった道ではアクセルワークが肝心や。

管理猿まえけん さんのコメント...

走りやか! 君は・・・・(笑)