2008年2月22日金曜日

猫の日に思う

誰が命名したかしらないが、今日はニャン×3で「猫の日」だとか。
ニャンニャンニャンという響きを聞くと、なんだかキッズの男女の青春的交わりを想像してしまう俺は、猫が嫌いだ。いや、動物全般が嫌いだ。でも、実家の猫「ニール」だけは、帰るたびに、一応ちょっかいを出す。本当はだっこしたりしたいのだが、強度のアレルギーで呼吸困難になりそうなので、控えている。それに、以前蹴っ飛ばしたことがあったので、ニールも俺の匂いを覚えているのか、警戒してこちらに来ない。ちょっと寂しい。

俺は動物嫌いだが、動物虐待をする人間ではない。なんで、ニールを蹴飛ばしたかというと、飼い出して1年ぐらい経った頃だろうか、俺は夢で悪夢にうなされていた。サナダムシが俺の腹の中で大きくなり、暴れだし、俺の腹を突き破ろうとしているといった場面の夢を見たのだ。腹を鋭利な刃物でひっかかれているかのような激痛があり、真夏だったと記憶しているが、汗びっしょりになって俺は目を覚ました。

すると目の前に飛び込んだのは、大きくなりだしたニールが俺の腹を猫ひろしポーズで引っ掻いている映像だった。俺は生涯でも上位に入るびっくりの仕方で、ふっと飛び起き、無意識にニールに蹴りを入れた。奴はそのまま押入れのドア向けて飛んでいった。ドスンという音と共に、崩れ落ちるニール! びっくりした俺は我に帰り、彼女にしてしまった行為に青ざめた。

幸いにしてニールは何ともなかった。フリーキックをきめるかのような蹴り方であったが、俺の足に柔軟に馴染んだ彼女の姿勢が良かったのであろう。ほっとすると同時に、俺の腹に描かれた引っ掻き傷を見ると、俺は冷静に奴を懲らしめたくなった。

それにしてもニールは俺の腹をどうして引っ掻いたのだろう? 寝る体制を再現してみた。ちょうど、夏であったので、俺は扇風機を腹辺りに向けて、一晩中風を送っていた。ちょうど俺の体と扇風機の間にあったスーパーの袋が風になびき、俺の腹部辺りに密着していたのだ。

そこに来たのがニールだ。アレルギーが今ほどなかった俺の腹の辺り周辺が当時のニールの寝床だった。奴は自分の寝場所に不法侵入した奇妙な動きを見せるナイロン袋に、異常なほどの闘志を見せたのだろう。そしてそれと格闘している間にナイロンが俺の腹上に来て、それに猫乗りになってしばきあげている下に俺の腹があったのだと推測している。

ニールは捨て猫だった。親父が死んだ後、すぐに俺の家の近くに捨てられていた。親父は大の動物嫌いとアレルギー者だったので、生存中は動物を飼う事はありえなかったのだが、ちょうど親父の逝去の後に迷い込んだ猫を、当時俺と2人で住んでいたおかんは、迷うことなく飼いはじめた。

生後すぐに捨てられ、最初の保護者がおかんであったニールは、おかんを母のように慕った。そして蹴り上げるまでは、俺を友達のようにみなし、俺が眠っていても枕元でニャーニャー泣き、俺に微妙な声色でささやきかけ、俺の部屋から洗面台に歩き出そうとする。俺が無視していると、再度、猫なで声で、「こっちに来ニャ!」と煽る。

「はは~ん、えさ入れに鰹節を入れろと言っているのだな。」と察した俺は、意地悪をしたくなり、無視していた。すると、俺の腹でゴロゴロしだし、飛び跳ねたりして、俺に戯れを要求してきやがる。そして再度、「早く来ニャちゃい!」といった声色で俺を先導しだす。数歩歩いては後ろを振り返り、俺がついてきていることを確認すると、また嬉しそうに歩き出す。そして、えさ入れを置いてある洗面所に来ると、首でえさ入れを指しやがる。「ここに入れニャちゃい。」

ニールは人間界で育った猫だから、野生では生きていけない。窓を開けて外に出してやっても、すぐに野良猫にしばかれて帰ってくる。はあはあ息を切らし、泣きじゃくっているくせに、俺がドアを閉めると、カチコミに来た野良猫に向かって、窓ガラス越しに罵声を浴びせる。目を逸らしながらも、虚勢をはる。全く、誰に似たのだ! 俺かニャ?
そして、対峙に飽きた野良猫が退散すると、得意げに俺とおかんを再びえさ入れに誘導する。

こんな野性味のかけらもない、へたれなニールが、1度口に虫を加えて帰ってきたことがあった。得意げに咥え姿を俺達に見せ、その日以来、餌の好みが変わった。贅沢なもの、魚類は魚類でもより匂いの良い、硬質な干物を要求しだした。そんな時に、上記の事件は起こった。

今から思えば、ニールに悪いことをしたなと思う。奴がやっと野生の本能に目覚めだし、風になびくナイロン袋に命を賭けて対峙していた場面を蹴り上げたのだ。俺は心が痛んだ。

その後、俺は家を出て富山に移り住む。実家に1人残ったおかんは、ニールの芽生えた野生がまた消失したこともしらず、2人水入らずで過ごしている。たまに俺が実家に帰ると、おかんの布団の上に横着に寝転ぶニールの姿がある。

朝型にはおかんといっしょに起き、ラジオのハングル講座を聞き、おかんより値段のはるものを食べ、1日16時間は眠っている。ニールももうおばあちゃんだ。俺のおかんと2人の老婆が枚方のとあるマンションで穏かな調和の中暮らしている。

ニャンニャンニャンの日、かわいげなニールが我が家に来たことを思い出した。そして、猫と老婆が穏かに生活している風景が目に優しく浮かんだ。

いまだに俺の腹部にはひっかき傷がある。ニャンニャンニャンと3本だ。≡は合同のマークだ。俺が再び合同できる日はないのかもしれないが、腹の傷跡を見るたびに、ニールと過ごした日々の温かさと、蹴り上げたことへの後ろめたい気持ちが蘇る。悲しい思い出ではない。

おかんとニールの齢具合は同じであろう。合同庁舎のような実家で、2人仲良く暮らしてほしい。
猫の日に思う。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

俺はそのニャン3の日に、愛猫との別れを経験したよ・・・。

管理猿まえけん さんのコメント...

泣くな! 気持ちはわかる。今度お好み焼き食いながら、色々話しましょう。
ラブ3の日々が早く訪れますように! もうある?