2008年2月24日日曜日

えぇ 

最初にスクロールして、1番下の絵を見て欲しい。トムとマイクとキャシーがならんでいる絵だ。性別は順に♂、♀、♂だ。

トムの手は大根だ。足は細さが違う。キャシーは首が無い。そして、恐ろしく足が矮小だ。マイクは毛が下敷きをこすってあてたかのような重力への反逆だ。毛の量は少ないというよりは、オンリーワンだ。手に指はなく、ドラえもんみたいなポッケがある。片足浮いている。

実にかわいい絵だ。実に独創的である。頭の中のイメージを書いたのであれば、大したものだ。これを書いた人は、絵の才能をもてはやされ、絵に芽生えを感じ、生涯にわたって、絵をたしなむであろう。幼児であったならば・・・・。

俺の絵だ。37歳がガチンコで書いた絵だ。自分でもびっくりしている。色んな意味で・・・。

今日、英語の比較級の質問を、中2生から受けた時に俺が描いた絵だ。質問してきた子の問題集が学校への提出用だったので、そこに描いてあった絵を俺は不用紙に写生し、説明をする段取りだった。
俺は最初にトムを写生した。

生徒: 「それ何け?」
俺 : 「めっちゃトムじゃ!」
生徒: 「男け?」
俺 : 「トムって書いてるやろ! 眉毛見ろ! めっちゃマンやんけ!」

次にキャシーを描いた。

生徒: 「それキャシーけ?」
俺 : 「そうじゃ! めっちゃスレンダーやんけ!」
生徒: 「足ないがけ?」
俺 : 「人の身体的特徴を馬鹿にすな! 生えてるっちゅうねん!」

こんな会話が交わされ、質問の主旨は飛んだ。そう、俺は絵がレミゼラブルなのだ。描いた瞬間、俺は生徒の間で辱めを受ける。

授業中に描いた絵に対する嘲笑、俺はそれを、「THE 辱め」と板書し、生徒の本気の笑いをとる。教育上良くないのだ。キッズの心が、学習単元にむかないのだ。

「せんせ~い! THE 辱め やって、やって~!」と勉強の主旨を忘れさせるほど、俺の絵は、キッズの間の笑いの対象となるのだ。 恥辱である。中には、「やばいっすね。」とクールに返す、理系のキッズもいる。俺は彼に鉄拳を加える。「どあほ!このピカソチックでデカダンスな絵がわからんのか!」と彼に退廃的な美を教える。中途半端に興味を示してくる。危険だ。

中学に入るまでは、俺は自分の絵の才能の無さを認識したことはなかった。それが、中2の時の美術の樺沢先生(思いっきり実名だ)というばあさん先生との出会いを通して、絵に対する劣等感を植え付けられることになる。

このばあさんの指導の下、俺は一生懸命に絵を描いた。小学校を訪問し、学校の中庭のある場所に腰を下ろし、俺は校舎の斜めからの映像と、構内飼育されている鶏小屋を中心に据え、指でアングルを言われたとおりに作り、会心の作品を描いた。それをだ、それをだ・・・・。

ばあさん先生は、俺が一生懸命写生した、「中庭から見た校舎の遠近画法」の絵を、クラス全員の前で晒し、「あの~、なんというんでしょうか~、鶏のとさかが校舎の屋根に突き刺さっていますね~。」と
言いやがった。爆笑の渦に晒され、俺はその日以来、絵のリクエストを嘲笑的に求められた。

俺はぐれた。樺沢先生を、「ばかざわ」と呼び、絵の具の水入れにはザリガニを入れたり、ばあさんのブラジャーのホックをみんなの前で外したりした。彼女は俺に切れた。俺も切れた。彼女は俺にビンタした。俺も奴のたらちねをグーで殴った。校長室に呼ばれた。

俺の中学2年の通知表の美術欄には、「1」が描かれることになった。遠近感のない「1」を前にして、俺は、絵が嫌いになった。

絵を描ける人を羨ましく思う。確実に、俺には見えていない映像が彼らには見え、俺が捉えていない映像が、彼らの眼と脳裏にはあるのだ。神が宿した不公平の1つだ。

コンプレックス以外の何ものでもない、俺の絵に対する能力であるが、コンプレックスは晒して払拭するショック療法も時には有効だ。俺の絵を見た人は同年代には皆無に等しいと思うが、晒すことで、何か前向きになれるものもあるような気がする。

厳密にいうと、何か、今となっては、こんな殺戮的な落書きを出きる大人であることが、嬉しくて逆自信になっているところもあるのだ。なかなか描けないよ、こんな牧歌的で猥雑な絵は!色んな意味で逆説的な絵だ。

新しい趣味が出来たのだ。かっこいいだろう? 俺はこれから、頻繁に絵を描くかもしれない。作品解説をブログでするかもしれない。才能ある芸術家は現世では忌み嫌われる。俺の絵を笑いたければ笑えばいい。「1」の刻印は昨今では「0」と組み合わさり変換され、無難な映像に変えられる。

例え、「1」評価の絵でも、自信を持って発信するならば、その映像はよくも悪くもそびえたつ。俺は「1」を「0」に変換しないことを決めたのだ。樺沢の呪縛から解き放たれたのだ。「1」であるがままに、時に発信したい。

意味不明の論調に、いち1「ひかない」でほしい。「0」との融合は俺の目指すところではない。

いい絵だ。オンリーワンだ。





2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

気の毒だ・・・。

トムもキャシーもマイクも、そしてマエケンも・・・。

管理猿まえけん さんのコメント...

こら! トムもマイクもキャシーも気の毒やけど、俺は絵ちゃうで! 「そして」で繋ぐな!(笑)

次回上京時は、業界人しか知らない店につれていってや! もちろん君のおごりで! 変わりに絵を描いてあげる。