2008年8月6日水曜日

居抜き物件

今ほどのガソリン価格の高騰以前から、全国的にガソリンスタンドは利益が出にくくなっていたのだろう。人件費を削るために、セルフスタンドにする店舗が多くなっていた。
本格的に到来する価格競争時代を乗り切るために、資金力のあるうちにセルフへの移行を済ませたスタンドはまだいい。

セルフ志向への波に乗り遅れたガソリンスタンドが、次々と廃業、倒産していっている。凄まじいスピードでの淘汰が全国的になされている。

「居抜き物件」という不動産用語がある。什器などの設備が残された状態の物件のことを指す。この状態での賃貸契約を結ぶと、新規開業者は初期投資費用を少なく抑えることができる。

什器などの設備が残った状態で次の経営者に引き継がれるという性質上、居抜き物件というのは、前経営者が廃業、事業失敗をした、つまり、「つぶれた店の跡地と残された設備」である。

新規事業にジンクスなどを気にする人にとっては、いくら安くてもなかなか手を出せない物件なのだろうが、気にしない人にとっては、かなり魅力のある物件である。

わが町でも、1つの店舗がつぶれた後に、ちょっとした外装工事だけを加えただけで、次の新規出店がなされている事例は、1年スパンで見ただけでも結構な件数ある。
居酒屋がつぶれた後に、また別に居酒屋が開業する。そしてまたつぶれ、三度別の居酒屋が開業する。

悲しいことに、いくら経営者が変わっても、呪われているのか、短い間に姿を消す立地というのもある。その一方で、前は全く流行らなかったうえに、立地もよくないにも関わらず、経営者が変わった後に大繁盛を遂げる店もある。

立地の力が商売に大きな力をもたらすこと、また、本当に優れて需要がある商売と商売人の店は、立地を選ばないのだという事実、両者を見ることができて、居抜き物件観察も楽しい。

この居抜き物件だが、コンビニがつぶれた後には、歯医者、皮膚科などの個人開業医や、個別指導を売り物にするフランチャイズ塾が入ることが多い。業種変えというわけだ。
坪数といい、内装といい、駐車スペースといい、コンビニ廃業後の店舗は結構需要があるみたいだ。厳密な意味での居抜き物件とはいえないかもしれないが、コンビニ独特の事務所スペースなんかは、新規内装工事を施さなくても使える事例が多いと思うし、窓の配置も多いので、優れた居ぬき物件の一種であろう。

夜の町に目を向ける。いつ通っても、新規開業の花輪が置かれている。ということは、同じ店舗が短いスパンで、経営者が変わっていることを意味している。夜のチャン姉商売も、経営者の才覚が大きく左右するのだろう。

コンビニ跡や、夜の飲み屋はまだいい。居抜き物件の買い手がたくさん見つかる。
ところが、ガソリンスタンドがつぶれた場合、居抜き物件として買う経営者は、100パーセントガソリンスタンド経営者だろう。地中にタンクが詰め込まれた所を消防署が買うわけもなければ、飲食店が買うこともない。設備、面積ともに、居抜きの対象となりにくい物体を抱えての倒産、廃業・・・、経営者の無念と、倒産後の過酷さがしみてくる。

解体するだけでいくらお金がいるのかしらないが、普通の民家を解体するだけで、数百万かかると聞いたことがあるので、ガソリンスタンドだと、1千万円越えの解体費用がいるのだろうと思う。

資本主義社会だから、商売の栄枯盛衰は仕方ないと思う。ただ、誰の名義になっているにせよ、もともとは、自然の大地のある一角に店舗があったわけであり、それが倒産後いつまでも、廃墟のまま、野ざらしで買い手がつかない状況が多く続く現状、これは景観保護の観点からも好ましくないと思う。国策レベルで何とかしてほしいと思う。

ガソリンスタンドだけでなく、パチンコ屋の跡も惨めなものだ。もう5、6年、買い手が見つからないまま放置されているパチンコ跡地も散見する。これ以上放っておいたらどうなるか? 

間違いなく、心霊スポットとして評判になる。 有効な大地が減って、心霊スポットが増える。そうなるとその土地が有効利用されるのは、行政レベルの土地再開発の時流を待たねばならない。

心霊付き・・・こんな居抜き物件はいらない。

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