2008年9月19日金曜日

職人の顔つき

俺の大好きなイチロー選手が200本安打を達成した。8年連続200本安打という、とてつもない記録だ。107年ぶりのメジャータイ記録である。記録達成を3安打の固め打ちで決めるというのもかっこよすぎる。イチロー選手はここぞという記録の日にはほとんど固め打ちで決めている記憶がある。

今年の前半は低調(といってもイチロー選手ならではの低調さであるが)であった。それにも関わらずコメントは的確で飄々としていた。何かとてつもない次元の自信があった上でのコメントであり、時期が来たらペースをあげてくれると思っていたが、思っていた以上に順調に達成してくれた。1ファンとして感動に感謝したい。

最下位チームでの打撃は、モチベーション面で大きなマイナスであろうに、確固たる自分のスタンスを異国で貫き通せる精神力の強さは、色んなスポーツ選手がいる中でも1番だろう。

以前、テレビ番組で見たのだが、イチロー選手は毎朝カレーを食べることに始まり、球場入りしてからのウォーミングアップを含め、全てのルーティーンワークをほぼ正確に淡々とこなすらしい。試合中継を見ていても、打席に入る前、守りに着くとき、同じように体をほぐしている。

単調な毎日に単調な作業をこつこつと抜かりなくこなすこと。一般人の仕事の局面においてもなかなか難しいであろうに、あれだけの注目を集めて邪念も入りやすい環境の中でそれを貫き通せるというのが素晴らしい。

そして、単調な作業を繰り返す中でも、種々のマイナーチェンジは繰り返している。フォームを定期的に修正しているのは、彼の中での飽くなき探究心の表れである。ただただぼ~っと繰り返しているだけではない。変えないところと変えるところの組み合わせ方が完璧だと思う。

あまりに素晴らしすぎてお手本として見習いたいと思う動機自体も申し訳ないくらいであるが、バンド活動、日々の仕事などにおいても、真面目に心をこめた積み重ねというものを意識したい。

それにしても、スーパースターは孤独だろうなと思う。一般人とは次元が違うのに、一般人が会見なんかで質問するわけであるから、そのほとんどはコメントのしようがないものだと思う。

時に無愛想に映るイチロー選手のインタビューなんかがあるが、仕方ないと思う。よく辛抱して低俗な質問に答えているなと感心する。

思いつきでぺらぺら一貫性のないことを話す人が多い中、常に言葉を選び、独自の言い回しで話すイチロー選手の語録をかみ締めたい。

イチロー選手のプレー中の顔を見ていると、いつも「職人」という言葉が浮かぶ。どう見ても職人顔なのだ。清原番長の魅力とも違う、野茂選手の顔とも違う、匠の顔つきを感じる。強いてあと職人顔を挙げるならば、武豊騎手だろうか?

淡々と自らの職を高い次元の心持でこなしていく姿がかっこいいのだ。

イチロー選手の後に下種な話をして申し訳ないが、人間の顔つきは持って生まれた顔つきを超えた雰囲気を、それぞれの状態に応じて醸し出すものだと思う。

三笠フーズの社長さんの顔が、飛騨牛偽装で有名になったあの社長と同じに見えて仕方がない。謝罪会見に至るまでの部下への責任なすりつけの姿勢も酷似している。

何を楽しみ、何を目指し、何に苦悩するかによって、天賦のものを超えた顔つきが形成されるのだと、改めて思った。

俺の顔はどんな言葉を連想させるのだろう? 生まれつき持った顔を褒められたことはないが、少しでも醸し出す雰囲気が、かっこよくて善良であるように変化したいものだと思った。

三笠の冬木顔ではなく、マリナーズの鈴木顔に近づけるように、ただただ表層的な形態を越えた自分のルーティーンを、誠実にぶれることなく楽しんでいきたいと思った。

イチロー選手の顔が職人に見えた今日、食人が蝕ばまれた獣に見えた。
顔つきは色んな織目を表していると思った。

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