2008年11月28日金曜日

テクニックへの目覚め

音楽に目覚めて30年、曲を作り出して25年、バンドというものを初めて23年、それなりにやってはきたのだが、「上手くなりたい」という欲求は、本当にはなかったような気がする。

初めて友人からフライングVのエレキギターを借りて弾いた時、とりあえず弾きたいと思った曲は練習した。キッス、オジー、ラット、ツェッペリン、レインボウ、イングウェイ、イーグルス、ラウドネス、アースシェイカー・・・、その当時聴いていた曲と、「ヤングギター」にTAB譜が載ったものとをつまみ食いしては、それなりに弾けた気にもなっていた。コードも知らないのに早弾きから入ったギターキッズの悲劇だが、その後にコード弾きをした時に、簡単だと勘違いした。

コピーはすぐに飽きて、自分で曲を作るようになると、自分がその時に弾けるコードから量産し出した。

歌を歌うようになったのが、20歳の時。バッド・カンパニー、フリーなんかをコピーしたのだが、人の曲が優れていれば優れているほど、「これが自分の中から生まれた自分の曲ならな~」と悔しくなるジレンマを感じ、名曲はリスナーとして満足するようになった。

そして今のようなバンドを組み、作詞、作曲するというスタンスになってきた。

曲を作って持っていくと、己のテクニック面はバンドが補ってくれる。そう勘違いしていた。確かに俺以外のメンバーの技量は上手いのだが、そこに混じっている俺自身が必要なテクニックが何であるかも、自分の楽曲を披露する喜びで麻痺していたように思う。

「上手くなりたい」という願望を勘違いしていたのかもしれない。「へたうま」と言われる方々のかっこいい演奏を聴いているうちに、自分にはその領域はないのに、そうだと勘違いして、テクニックを磨くことに貪欲なところが欠如していたように思う。

最近になってようやく、自分が作った曲が、もっとよくなり、広がる可能性があるにも関わらず、己のテクの領域に支配される悲しさをすごく痛感しだすようになった。

ギターに関しては、やっと自分の出せる音を認識できるようになってきたレベルだが、優れたギター人に恵まれ、俺のリズムギターはそれなりに味も出てくるようになったと思っている。弾き語りで演奏する分には、まだまだだが、今は歌のサプリメントとなる土台としてのギターはだいぶ弾けるようになってきたと思う。問題は歌だ。やっと歌い手としての当たり前のことに悩み出している。

最近やっと俺は音程がファジーであることに気づいた。たどりつきたい音があるのに、そしてそこにたどり着いていないのに、何だかたどりついたような気になっていた。耳が悪いのだ。正確にいえば、自分たちの曲を全体像として聴いていて、肝心の歌に注意して聴いていなかった気がする。

ピッチ悪い悪い。息継ぎ悪い悪い、かつぜつ悪い悪い・・・。耳が良くなったとも思えないので、聴く技量が上がっただけなのだろうが、最近は自分の歌の細部にすごく耳がいく。

ハイ・ソウルで声量はあると思う。今ほどPAも発達していなかった時には、ヴォーカルは、とにかく声量があってなんぼ!と思って、大きな声を出すことしか念頭になかった。元来の美声と歌う才能を持たない俺は、ラウドネスには自信があった。それにものを言わして、低レベルで満足していた。通る声と、声量レベルとを混同し、いかがわしい枯れ声を武器と思っていた。

若い時分は、森を見ずして木を見るもののようにテクニックの向上を捉えていた。だから、テクニック練習というものを、軽く見ていた。さらに細部に目がいくことを忌諱していた。

確かにそういった面もあるだろうし、その勘違いを否定はしない。勘違いしたおかげで作り出せてきた音楽観、ロッキンな道筋、そして楽曲もあったと思う。

だが、今ならいくら木を見てもその奥にある森を見失うことはないような気がする。むしろ森を彩らせるための筋の通った木のあり方を模索できると思う。技術向上に対する遅い目覚めとはいえ、今から意識して技量向上させることは、すごく意味がある気がする。

今の生活環境において、意識レベルで出来るレッスン、物理的レッスン、両者ともに続けていきたいと思う。

俺はテクニックでリスナーを圧倒させたいのではない。上手く聴かせたいからテクニックを身につけるのではなく、俺たちの音楽を聴く人たちが俺のテクニックに耳がいかないようにテクニックを身につけたいのだと思う。

この逆説は、ローテク・ハイソウルだけを標榜して突っ走った日々があったからこそのものであり、テクニックの正しい解釈だと思う。イッツ・ロック!

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

すばらしい開眼やね。
より高みを目指して共に歩もう!
(貴方のロッキンなセンスには一目置いてます)

ところで、先日の練習でのソウル・サヴァイヴァー、聴いてみたら、なかなか気持ちいいグルーヴだったよ。
あれくらいで録れればいいなぁ。
あと、ライヴ用アレンジで、
”前進、前進”で盛り上げて、
”撤退、撤退”で落として行くって
風にすると楽しいかも。どうでしょう?

管理猿まえけん さんのコメント...

>ウエダさん

まさに開眼です(笑)しっかり精進いたしやす。色々調教ありがとうございます(笑)
「ソウル・サヴァイヴァー」のライブ構成、イメージ涌きます。次回試してみましょう。