2007年12月26日水曜日

コピーに見る世相

昔から、町で見かけるポスターなどに書いてあるコピーに、人一倍興味を示してきた。
俺が育った昭和の大阪では、今から思えば、えげつないコピーが結構あった。

犬の散歩中の糞に悩む家主は、広告の裏にマジックで、「くそ持ち帰れ! 犬をたおす薬まくぞ!」と書いた。松本サリン以前のコピーである。倒す相手ではない。

ヤンキーが店前でうんこ座りして、客にメンチを切りまくることで、健全な客が減った、ゲーセンの店主は、ダンボールに赤字で、「便意を感じたら店内へ!」と書いた。コンビニが便所を開放した先駆けである。利用率は低く、喫煙所と化していたが・・・。

アルバイトの人材に悩みを抱える町の本屋は、模造紙に一通りの募集要項を書いた後、下隅に色を変えて、「怒りを辛抱できる方求む!」と書いた。よほど嫌な辞め方をするバイトが続いたのであろう。「キレる」という言葉が市民権を得る前のことである。

小学校の友人の玄関前には、「ベル故障! ドーベルいます。」と書かれていた。ランボーみたいな体勢での不法侵入しか、彼の家には入れなかった。狂犬病がこの後流行りだした。

不審者が出没する事件が多発した時には、通学コースにPTA看板が立てられた。白地に黒字で影男の絵が描かれていて、その目は光っていた。「気を抜くな。奴が見ている。」 奴よりも看板の方が不審だった。この年、オカルト漫画が流行した。

大人になってからだが、スルメが土産品として名産の佐渡島で見た看板は、「スピード違反はするめ~!シートベルトはあたりめ~!」と書いてあった。看板全体がかもし出す雰囲気も平穏で、俺は島流しされたいと思った。この当時、駄洒落を言う大人が「オヤジ狩り」された。

俺が今までで一番好きなコピーは、実際に見たものではなく、東京の盟友に教えてもらったコピーだ。
東京近郊の岡っ引きのポスターのコピーだったらしい。銃器取締りのポスターに、岡っ引きモデル数名が写っていて、「俺たちみんな無鉄砲!」というものだったらしい。俺はこれを聞いた時、死ぬほど笑った。この岡っ引き集団の県では、蹴球技が盛んになり、その血の気の多いサポーターが時に暴動を起こすこともあった。しかし、喧嘩は全てステゴロであり、無鉄砲のコピーは浸透していたみたいだ。

コピーを専門にする人から、たまたま考えさせられた市井のおっさんまで、種々のコピーが生み出されてきたが、真面目に目を凝らしてみると、実に上手く世相を捉えている。今一番大事な問題を写す何かをコピーは無意識に内包しているのかもしれない。

秀逸なコピーは少なくなってきていて、手書きのコピー自体も少なくなってきた。しかし、探せばまだあるはずだ。目を凝らして街中散策をしたい。

今は環境破壊が大問題だ。自然志向、スローライフが叫ばれて久しい。ガソリン価格の高騰、枯渇が深刻化している。ハイブリットが緊急の問題だ。また、飲酒運転に対する厳罰化はさらに強化されてきている。車を捨て、徒歩の生活をすること。この両者が昨今のテーマなのかもしれない。

こんなことを考えていた、まさに今日、上記の無鉄砲を教えてくれた盟友が、またもや、いいブツを持ち込んでくれた。これも岡っ引きのポスターだ。

「飲んだら歩コール!」 ・・・ コメントはいらない。岡っ引きも粋なところがあるではないか。

お江戸の盟友は、岡っ引き業界で働くことになったようだ。彼が非難が多い業界に新たな風を送り、死後に、檄文となるようなコピーを生み出してくれるのではないかと考えている。世相を映す価値がある男だ。俺は岡っ引きが急に愛おしくなった。

彼の前途に拙コピーを送りたい。

「冬の 桜だ 門街の漢(おとこ)」    来春に桜田門で呑みませう!

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