2008年6月21日土曜日

グッド・ジョブ!

連日の職業ネタ。

転職率の高い俺は、今まで色んな仕事をしてきたが、職に就いている時は、その業種の中で精一杯楽しんだ。

楽しむということは、その業種全体に興味がいき、オフの時間でも該当業種への視点は、他者にはわからない興味深さを生む。

例えば、作業用品全般を販売していた営業時代は、製造業者を見ると、全て飛び込み営業したくなった。

「~工業」、「~興業」、「~製作所」、「~鉄工」、「~建設」、「~運輸」、「~食品」、「~アルミ」、「~コンクリート」・・・・・。

社名という社名に敏感になり、自分の担当地域の会社という会社は全て飛び込んだ。

自分の担当地域の会社は、看板を上げている会社は100%、上げていない会社(自宅が事務所)なんかも洗い出したので、全会社数の95%以上は飛びこんだと思う。
いくら、営業向きの風貌ではないとはいえ、数打ちゃ当たるで、営業成績は抜群に良かった。

俺が職業病を感じたのは、休暇で県外にいる時だ。バンドで上京中、家族旅行中、県外のあらゆるところに行くたびに、無意識に会社名の書かれた看板を目で追っていた。

電車の車窓を眺めている。「~鉄工所」なんて文字が見えたら、「おや! こんな所に会社があるやんけ! 革手と安全靴とユニフォーム売れるやんけ!」と興奮し、後で冷静になる。 「縄張りちゃうやんけ!」

こういう視点は皆持っているだろうと思う。アパレル関係の仕事の人は、街行く人の服や雑誌を見ても敏感になる。

広告代理店は、どこの会社がどこから、どのくらいの宣伝費で発注しているかに興味がいく。町中のチラシと看板に敏感になる。

就いている職業に真剣に向き合っていれば当然のことだろう。

面白かったのは、昔、ある会社の社長と話していた時だ。

道路工事の前段階として、道路を裁断し、古い舗装の残骸を駆除す業種がある。「~カッター工業」なんて社名で、全国にある。そんな会社の社長だ。

そこの社長は、プライベートでも、車を走らせていると、道路の痛みが気になる。そして、痛んだ場所があると、そこが近日中に、舗装工事の対象になることを知るらしいのだ。
心の中に、「ここ、・・・・切れる!」と思われるそうだ。

その社長と話していた時に、解体業の社長が来られた。俺はどちらにも面識があったので、一緒に会話した。

解体業者社長:  
「 あんたら、どっか壊すとこないけ?(注:どこか解体する現場の話ないですか?)」

カッター業社長: 
「 な~ん、 ないわ。 あんたとこ一杯壊しと~がいね~(注:ないですね~。でもあなたの会社、たくさん解体しているでしょう?) それよんか、 社長、どっか切るとこないけ?」

解体業者社長:
「な~ん、ない。」

2人の社長:
「せちがらいの~・・・・。」

これらの会話は、決してユーモアを意図してなされているのではなく、彼ら2人の社長の日常会話なのだ。

壊すこと、切ることを生業とされている社長の会話は、俺には面白くて仕方がなかった。

思えば、色んな仕事と会社があるものだ。それぞれの仕事にプライドと使命を持ってされている人の会話は、聞いていて心地よい。時にユーモラスだが、馬鹿にしたくはならない。敬意を持った上でのユーモアを感じる。

日常の生活、目にするあらゆるものに思いをはせる。

自然の物以外は全て、製作者が存在する。そしてそれを生業としておられる人がいる。

パソコンのキーボードを叩く。パソコン本体の販売業者もあれば、パソコンのプラスチック部分だけを作っている会社もある。半導体だけを作っている会社もあれば、出来上がった商品を販売する会社がある。販促のために広告する会社があれば、メディアがある。
素晴らしき連携プレート、経済山脈の裾野だ。

そして、それぞれの業種に関わる方々が、俺と同じような視点で市場を見る。

例えは悪いが、性産業なんかにしても、コンドームを作る会社、販売する会社、キャッチコピーを考えるコピーライター、販売する薬局、宣伝ポスターを刷る印刷会社、連係プレーは至る分野にある。

大の大人が、一生懸命仕事に打ち込み、精力増強剤のキャッチコピーを考えるとする。
商品名は「絶倫大王」だとする。

これは、青少年教育的観点からしたら、退場、レッドカードものだが、その人が職業使命に燃えて行った所為としては、純潔無垢、倫ある行動だ。

「絶倫大王」を考えた会社の人は、プライベートでも、ライバル会社の商品名なんかをチェックする。例えば、町で、「スッポン王国」なんて、精力剤のコピーを見かけると、
「くそ! あっちはスッポンできたか~・・・。 ならば・・・」

と、種々の職業使命的思考を巡らし、時には嗜好も交えて、新たなる商品開発に取り組む。

「膨らみある性生活を! バルーン!」なんてコピーで対抗する。突起に対して膨張率を市場に問うのである。



悪ふざけが過ぎた。すまない。

職業に対するプロ意識は素晴らしい。それぞれが精魂込めて取り組む仕事に貴賎の区別はない。

職業の数だけ独自の視点がある。色んな視点を実際に体験したり、他の業種の方から話を聞いて疑似体験し、己の視点のバリエーションを増やしていけたら、グッド・ジョブだ!

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