2008年1月3日木曜日

連休終日

あっという間の4連休。明日仕事に行って、明後日は休みだが、家庭教師して、夜は新年会。そして明後日からは、ひたすら受験一色の日々に突入する。

よく呑み、よく食べ、よく遊んだ4日間であった。今日は、近郊の温泉に嫁と行った。街中にある、介護施設に隣接している風呂であり、休憩スペースも多く、あまり好きな佇まいではないが、湯の質が素晴らしいので、再訪である。

正月3日目ということもあり、たくさんの人で賑わっていた。駐車場の車の台数があまりにも多いのを見て、行くのをためらったが、駐車中の車から判断し、老人率が高いであろうことを俺は考慮し、「湯船に入っているのはこの車の台数の中の2割に違いない!」と俺は読み、湯浴みを決行した。

予想は的中。8割の人は、休憩所で、魂を抜かれた猿のような風体で、みかん食い食い、正月番組を白内障の目でショボショボさせながら見ていた。「持ち込みご遠慮願います。」の張り紙もなんのその、つかりまくった漬物や、みかんや、おかきをテーブルに広げ、口をパクパクさせながら、金魚体操をする婆さんの横で、爺さんは沈没していた。湯当たりというより、この世の晩年に当たっている感じの凹みぶりであった。

浴槽は2割しか入っていないので、それなりに快適な空間を保てている。それに高齢者は外気が堪えるのか、内風呂を好む。体内の刺激感度がゆるくなっている分、熱いお湯を好む。俺には願ったりだ。

地方都市の街中に無理やりこさえられた露天風呂ではあるが、芝生とガリガリの木が雅に配置され、それなりに和の心をかもし出している。湯ざわりは、有馬チックなタッチである。温度も少しぬるめで、外気に触れる半身浴だと、カラスの行水仕様の俺の体でも、長く入っていられる。

カラスが一羽、透垣みたいな外壁のてっぺんに止まって、こちらを見ていた。実に不味そうな鳥獣だ。
歴史ある名湯の開湯秘話には、よく獣が傷を癒していたことから、鉱脈が発見されたといった、エピソードがあるが、カラスが、傷跡を癒していたところに、いで湯があったという話は聞かない。
カラスは、不潔な気がする。あの黒さは、入浴嫌いに起因するのではないか? 羽のギッシュな感じは、頭髪ギッシュな輩と同じ発光である。近寄って見ようと思ったが、カラスの至近距離にいた翁がお湯をかけた。

「どっかいかれま!」  翁の頭と髭は見事な白色で、黄門使用だ。威光ある白色の翁と、黒カラスのハーモニーは、福音の香りがした。 手ぬぐいで顔を拭いて立ち上がった翁の肛門は脱肛していた。
俺は翁が作る湯流を遮り、石上に避難した。じ、じぃ~、何見せとんねん!

翁が去った後、俺は翁が陣取っていた芝生周辺に場を移し、再度湯船に浸かって、賀正の庭園を眺めた。今度はハトが一羽顔を出した。奴は芝生に降りてきて、その見事な文様を誇示するかのように、モデル歩きをした。俺の腹がなった。「美・美味そ~う。」 不覚だ。

そういえば、朝から「キャラメルコーン」を食しただけだ。平和の象徴を食そうと思う邪念を振り切るために、俺は奴に湯をかけた。奴は逃げる直前に、一瞬こちらに向かって飛び出した。襲撃の香りを感じた俺は、「逃鳩」した。キャラメルの祟りだ。風呂を上がり、Mドナルドで、チキン系のバーガーセットを頼み、車中で食した。祟りは食して終わるのだ。

結構雪が降っていたみたいで、道路わきには未踏の雪段がたくさんこしらえてあった。ふと見ると、雪に覆われた田んぼの中央部に、孤独な墓石があった。膝までは没する積雪の中で、来るものを拒むかのような墓石に俺は悲哀を感じた。遷の風を嗅いだ。「あなたのお墓の前までは行きようがありません。」

不謹慎な思考を戒めつつ、家に帰った。

連休が終わる。連休終日は、酒宴の儀式を執り行うのが慣わしだ。俺はアルコホールを鯨飲した。

俺の数多い職歴の中で、連休が終わる日の晩餐は、最後のミサといった、悲哀を帯びたものであったが、塾業界に入ってから、この感情は消えつつある。ふつふつとエナジーがわいてくる。

明日からは、受験一色の日々が始まる。黒か白か、線引きは残酷な世界だ。しかし、カラスVS白い翁の戦いのような、究極の対決ではない。一時的に染められる水性の戦いが始まるだけだ。長期的に見たら、なんてことはないのかもしれないが、彼らが、雪上に一歩を踏み出せるように、精一杯の介添えをしたいと思う。

もし、黒く塗られる運命の若人がいたら、俺は彼の色を落とす作業を優しくしてあげたい。決して湯をかけるような乱暴な真似はしない。

良い3が日を過ごした。新たなる活力を胸に秘めながら、脱稿する。

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