2008年1月8日火曜日

ばかだもん!②

俺が中学生の時、英語の先生が、"What time is it now? の発音を教えるのに、「掘った芋いじくるな!」と言えとおっしゃっていた。結構定番な教え方だったみたいである。

「クラブ」の「ク」を強く発音するアクセントが、まったくなくなりつつある、昨今の平板な発音であれば、「掘ったいもいじくるな」と言っても伝わらないであろうが、昔は、日本語に高低アクセントがしっかりとあったので、通じたのであろう。なかなかナイスな教え方である。

日本語の高低音がはっきりしていた時代に、" Bark at the moon"を、「ばかだもん」と教えると、それは一世風靡の教え方になったかもしれないと思う。 ま~、一生で一回使うか使わないかの表現なので、「掘った芋いじくるな」ほどの需要はないし、教科書にも載る表現ではないが・・・。

「月に吠えろ」という文句を聞くと、狼を連想する。俺の生物学的な主観分類によると、狼はキツネが凶暴化したようなものだ。 そして、キツネは柴犬と見分けがつかない。

そうだ、愛くるしい瞳で飼い主を魅了し続ける柴犬君であるが、奴らは狼の親戚である。狼をペットとして買う奴を俺は知らないが、柴犬はたくさんの人が飼っている。その差はなんだ! 歯の鋭さか?

ハムスターやモルモットをペットで飼う人はいるが、ネズミを飼う人はいない。ネズミはネズミでも、幸せな奴らは飼い主に愛される。その一方で、新薬開発の実験材料にされ、「どぶ」を冠されて忌み嫌われる奴までいる始末だ。その差はなんだ! 住んでる環境か?

蝶は昆虫マニアに捕獲され、標本とされて、一家の宝となる。しかし、蛾の標本を見たことがない。その差はなんだ! 粉の色か?

伊勢えびを見て、「おいしそ~う!」とは言うけれど、ザリガニを見て涎をたらしはしない。その差はなんだ! 海と湖沼の居住区か?

鳩には、「~さん」をつける子供がいるが、カラスに「~さん」をつける子供は、ムツゴロッシュな環境のお子様だけだ。その差はなんだ! 色素か?

こんな矛盾は、くさるほどある。同じ類のものであっても、人間様に好かれる奴らと、嫌われる奴らがいる。「あらい」と「テディ」の熊は好かれるが、「ひ」と「月の輪」の熊は嫌われる。それどころか、俺らが油断していたら食われる。

俺は動物、昆虫を見るたびに、その種の中の、人間が忌み嫌う奴らを想像してしまう。

なんで、こんなに動物、昆虫を嫌いになったのだろう? 色々振り返ってみることがある。

俺は、犬に噛まれたことが3回ある。内2回はケツを噛まれた。ケツ肌は意外にもろいことを知った。

俺は、口を開けて歩いていたら、イナゴが入ってきたことがある。苦味を残して彼は立ち去った。甘露煮は多量の甘味剤が必要だと知った。

俺は、鹿に襲われて、踏まれたことがある。角でグリグリもされた。奈良公園はサファリーパークであることを知った。ケツ肌は貫通しやすいことも知った。

しかし、こんな肉体的な被害だけで、ここまで嫌悪する対象になるはずはない。深層心理やいかに?

暫定的な結論を出しておく。おそらく俺は、動物、昆虫と、原始レベルで対峙しているのだ。
動物を愛でたりするような余裕がなく、食うか食われるかという対象で、真剣に対峙しているのだ。
獣と獣の対決だ。獣同志の鬼気迫る対決ビームは、互換性がある。

だから、俺が動物、昆虫を見る眼光は鋭い。そして奴らも俺の前だけは油断せずにいる。

昔、俺の友人が家で犬を飼っていた。事前の話では、「絶対に噛まない」ということだった。そこに、友達3人で遊びに行ったのだが、部屋に入る前から、珍しくその犬は吠え出し、障子を開けた瞬間、他の2人には目もくれず、俺にだけ飛びついてきた。即噛みである。咀嚼されるほどの深噛みである。俺は敵に背中を見せる弱点がある。また、ケツだ。俺のケツには多数の傷害痕がある。仁義無き獣共のせいだ。

昔、おばあちゃんの家の近くの動物園に兄弟3人で行った。えさとして、ピーナッツ揚げを持参した。
俺の兄貴と弟がえさをあげると、奴らはすぐにやってきて、ひたすら乞食した。マナーは良い。ところが俺が手を出すと、奴らはひったくるように奪って、おまけに金網越しに頭突きをかましてきやがった。
この時は、俺の頭蓋骨のハードが勝った。奴は逃げ出した。人生最初で最後のウィナーである。

間違いない。俺には獣に通じる香りがあるのだ。違う種のもの同志、憎みあう運命なのだ。これからも警戒感と縄張り意識を持って過ごしていかなければならないのかもしれない。俺達の日々に安らぎはない。

俺は犬年生まれだ。人間界では「猿」を冠されることが多い。犬猿、相対比するものを内包した混血だ。えげつない獣臭を発しているに違いない。運命と割り切って、この険しき獣界を渡っていくのだ。

犬はキツネの仲間だ。キツネは狼と似ている。狼は月に吠える。俺も、月に吠えるのだ。獣界は弱肉強食だ。戦いに勝つために、まずは威嚇だ。俺は昼夜関係なく、月の方向に向けて彷徨し、しっかり吠えたいと思う。

獣の俺だが、俺の種は「ホモ・サピエンス」だ。獣界のエリートだ。俺の吠え方は文字を使う。他の獣には真似出来ない。

そして今日も俺は吠える。" Bark at the moon! " 「ばかだもん」。  完結。

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