2008年1月24日木曜日

THE 明

チープのベースの明君、彼から最近、頻繁に電話で相談を受ける。純粋に悩んでいて、純粋に吐き出してくれるのだが、その相談内容がかわいい。明君の許可を取った上で、少し彼について述べたい。

俺は明君の天然の純真さを尊敬している。今まで出会った人間で、彼ほど、いい意味で単純で、マイペースな人間を知らない。

俺は、彼が学生時分から、きっと彼は、これからも母性本能をくすぐり続け、素晴らしき伴侶にめぐり合い、嘘のような守られた暮らしを全うできる人間だと思っていた。1つのことを見つめたら、他の事が目に入らない直進性も、計画性のない、恐るべきマイペースさ、今でいう「け~わい」も、彼にとっては、何一つデメリットにはならなくて、むしろ、それをキャラとして許される、数少ない、選ばれた民だと思っていた。

面識のある人間なら、すぐに察知するであろう、彼が宿した無垢の素晴らしさ。関西人にはツッコミどころ満載のボケの数々、そんじょそこらのパッケージされた芸人には真似出来ない本物感が彼にはあった。

そんな明君が、学生時代の晩年頃から、少し、二枚目を気取るようになってきていて、俺はそれを危惧していた。彼が二枚目でないということではない。ただ、ルックスを覆い尽くすだけの、凄まじき天性の三の皮が、彼にはあるのにもったいないと思っていたのだ。いや、三枚目とも違う。長島さん級の爆発力を秘めた、四次元の凄さだ。時空をはるかに超えた、ぶっ飛び方が彼にはある。

それが、社会の渦に巻き込まれ、明君の良さを本能的に理解できるだけの時空を持っていない人間との交流が増えだして以来、彼は猛烈なスピードで荒んでいった。

荒んでいった直後、俺は嫁を連れて、彼の郷里を訪ねた。颯爽と二枚目チックに俺を車で迎えに来た明君だったが、彼は、俺を待ち合わせ場所から実家に誘導するまでの、ほんの1キロ圏内でガス欠した。何が起こっているのかを俺たちには言わず、彼は、もぞもぞしていた。

俺は、すぐに察知した。「欠やろ?」と聞いた。彼は、空を見上げながら、「ケツ」と答えた。俺はガススタに走った。彼は空を見上げながら、1mの範囲を何度も周回して歩きながら、困った顔をしていた。

俺がすごいと思ったのは、交通量の多い国道で、道脇には数々のテナントがひしめきあっている状況にも関わらず、彼の車が燃料切れした瞬間、動力の余力だけで動ける範囲の路肩に、素晴らしきスペースがあったのだ。奇跡的な映像であった。彼がガス欠した瞬間に見た、彼の天性の強運に俺は驚愕した。彼なら、多少はぐれても、やっていける! 俺は、彼をヨチヨチしてあげたい気分だった。

こんな、昔の香りを宿していた時期もあったが、彼は、その後も変化を遂げ、確実に標準化していった。いや、標準化たろうとしていた。もちろん、彼の考える標準化は、どこか時空を超えている。射程距離が計画と異なるテポドンみたいなものだ。飛びつく先に対する計画性や、爆発力に対する認識は、彼にはない。

彼は苦悩を深めていった。そして、やさぐれていった。かわいさが少し消えつつあった気がして、俺は彼に、愛のムチで、容赦ない罵声を浴びせた。俺もどうかしていた。彼が変わっていく姿が、あまりに残念だったのである。

彼の苦悩は仕方ないことだ。大人の社会は厳しい。単なる母性本能だけでは渡っていけない何かがある。苦しむがよい! と残酷に考えていた時もあった。

彼が学生時代のままの、ありのままを貫き通せていたら、少し局面は変わっていた気がする。
彼が、周囲からツッコマれる事柄に、何かむきになる感覚を持ち出した時、彼の苦悩は高まっていった気がする。彼の良さを認識できる人が少なくなったことは、個人的にも嘆かわしいことだが、社会はそんなもんだろうというあきらめが俺にはあった。それにしても、明君が、元の明君に戻ってくれるように、願わずにはいれなかった。

そんな明君の良い変化を感じたのは、昨年の秋ごろである。彼は、定期的に、家庭が眠りにつく時間帯に俺に電話してくるようになった。復調の兆しである。

電話をかけてきて、彼が話し出す最初の言葉を聞けば、俺は彼の復調を察することが出来る。

「今ちょっといい? あのさ、実は・・・・・・・・」という壮大なタメをもって、小さな話題をふってくる。復調だ!

週に5回の電話の固め打ち、そして、その話題の全てが同じテーマ。復調だ!

彼は彼なりに、電話が嫌いな俺に、最大限の気配りをしてくれている。「ちょっと、今日はわけあって聞きたかったんだけど・・・、 2分で終わるから・・・・、」と、長い前置きの後、生涯に30回は交わしたであろう話題をふってくる。いじくらしくて、鬱陶しくて、愛しい。この感覚は別世界だ。

こんな明君、今日の電話は、いつもとは違う、憂いを帯びた口調で始まった。失恋したのだ。彼の名誉のために断っておくが、彼の失恋は、実に清くて、奥深いものだ。彼の良さを母性的に理解した彼女と、それに応えるために、精一杯努力した明君。責められる要素はない。どうしても、期待に答えようと、標準的な男を演じてしまったことに対する落ち度を彼は感じていたみたいだが、自分がいかに天性の、良い意味でのボケをもっているかが、自分でわからずに、苦悩しているようだった。

俺は、涙ぐみそうになった。「1人で溜め込んだらしんどいやろうから、いつでも電話してきてや。あんたは、羨ましいくらいの、天性のかわいさがあるんやから、ありのままで、楽しい日々をすごそうぜ!」と俺は彼に言った。

彼は、「わ、わかりました。」と年下の俺に丁寧語で応えた。多分、この前、ビジネスマナーについて話したので、丁寧語を使う相手を間違えてしまったのだろうと思う。すごく、心に沁みた。声のトーンが健気で・・・。明君に春が訪れることを願わずにはおれない。

辛い日々がまた訪れた明君だが、一時と比べて、精神的な尖りがなくなって、もとの明君に戻ってきている気がする。嬉しい限りだ。

復調気配が見えた明君。そして、それを待っていたメンバー、彼の復帰が叶い、俺たちは来月久々のリハをする。泣くな明君! 四次元ののうねりを待っている。

2 件のコメント:

みや さんのコメント...

明君(さん?)復調の気配、とても喜ばしい限りです。どうしても社会ってやつは、強者の論理の上に築かれています。僕も随分と改造させらました。(社会性の乏しかった僕にとっては幸運にも良い面が多かったけど)純粋な人ほど、社会に対応できなかった時の精神的軋轢が幾ばくなものか想像の難くないです。特殊な業界(音楽業界)で働いている身としては、実際に他人の精神的崩壊を幾つも目の当たりにしてきました。

それにしても、まえけんをはじめチープの皆が急がず、辛抱強くかつ暖かく明君を待ってあげている事が、彼の回復の契機になっていると思いますよ。ほんとにチープのあったかさを羨ましくも思います。

来月のリハ頑張って下さい。

管理猿まえけん さんのコメント...

みやさん

温かいコメントありがとうございます。貴殿の業界は、一般人からしたら、まじで特殊やから、色んな人たちを見てきたのでしょうな。みやさんは、なんだかんだいって、しっかり社会に順応しながら、感性も維持しているから、すごいと思いますよ。リハ、楽しみでなりません。