2008年12月3日水曜日

友人の誕生日に思う

すごく個人的なことなのだが、12月2日は俺の友人の誕生日だ。その友人とは、ここ数年、たまに電話でやり取りするくらいで、めっきり交流も減ったのだが、高校時代から俺が富山に移住するまでの間、かなりの密度で付き合った。

彼とは高校で知り合った。たまたま苗字の関係で、高1の最初の座席が近く、宿泊学習で同室だったのが、きっかけだったのだが、俺は最初、彼を正真正銘のヤンキーだとみなしていた。

当時、すごく柄の悪い、不良率が高い団地があった。そしてその団地を校区とするM中学校は、ヤンキーの巣窟と言われていた。その中学出身の彼は、入学式初日から学ランばりばりで、髪型もツンツン針葉樹林みたいなもので、とにかくヤンキッシュだった。

新設校一期生の俺達は、入学早々、和歌山の「浦島ホテル」に宿泊学習の名の、延期工事の帳尻あわせで飛ばされ、そこで俺はヤンキッシュな彼と同室の日々を過ごした。

彼はヤンキッシュだったが、実に良い奴だった。俺達はすぐに仲良くなった。彼の出身中学のヤンキー共を全部教えてもらい、俺も色々紹介してもらえた。そして彼のおかげで、ヤンキー同士の縄張り争いと天下統一に明け暮れる、高1の1学期を俺は、日和見的に平和に過ごした。

彼は学力が恐ろしく低かった。俺の行っていた高校の偏差値も低かった。入学が決まって、初めて課される春休みの英語の宿題テキストが、アルファベットからであった。

彼はそれもやってこずに、通常授業初日から先生に怒られていた。彼曰く、「大文字はわかるねんけど、小文字がな~。やれ言うても無理や!」と、中1みたいな理屈で、初日から先生の悪口を言っていた。俺はヤンキッシュな彼の思想に敬意を表して、一緒に悪口を言った。

彼は女の子にもてなかった。俺はそれなりにもてた。俺は彼の失恋回数を数えるのに両手を必要とする。当時のヤンキーは、中学時代はもてたのだが、高校に入るともてなくなりだしていた。彼はその筆頭だった。

彼は単純だった。腐らずにもてる努力と求愛をくり返した。俺はことごとく彼を支援した。

好きな女の子がバスケ部だったら、彼は自分もバスケが出来るようになろうとした。そして、昼休みなんかに校庭のバスケットゴールでシュート練習を始める。俺はことごとく付き合わされた。でも付き合いで嫌々の俺の方が上手かった。彼はすぐに挫折した。上手くなりきる前に求愛し、ふられた。

次に彼が好きになった人は音楽が好きだった。長渕剛が好きだった。特にハーモニカが好きだった。彼はすぐにハープを練習し出した。俺もことごとく付き合わされた。放課後部活前のちょっとの時間、校舎の踊り場で、ハープを吹く男2人・・・、音はエコーっているは、絵的に惨めだわで、俺は、「部活行かなきゃ」と理由をつけては逃げた。それでも彼は、俺の練習が終わるのを校門前で待っていては、「続きしようぜ!」と言う。「自分、痛いで~!」俺は心で毒づいた。

2人で、学校前の田舎道に座り、虚しくハープを吹いた。音色は敗戦直後の日本風味である。俺の中では今でも、心地よくない慕情のメロとなっている。

高3になると、彼は就職のクラスに、俺は進学のクラスになって離れたのだが、それでも交流は続いた。卒業をかけた高3の定期テストになっても彼の成績はひどかった。留年をちらつかされるほどだった。俺はテスト前に彼によく個人教授をした。

だが、待ち合わせの時間に彼はよく遅れた。怒った俺が問い詰めると、「おかん殴ってたから遅くなった。」と彼には正しくて、俺には正しくない理由を述べた。

こんなことを書いていると、彼はむちゃくちゃであり、俺が彼に恩義を売っていたばかりみたいに思えるが、高校卒業後、俺は彼から色々恩を頂いた。

彼の車の助手席に乗った回数は俺が断トツで多いし、稼ぐことに秀でていた彼はいつも裕福だった。初期チープハンズでの俺のギターは、全て彼のギターの借りパチだった。
一時期は俺のアッシーとなってくれていた時期もあったし、俺が中退後、ふらふらしていた時には、彼が働くコンビニに、彼の口利きで入れてもらったりもした。

チープハンズのライブに来てくれた回数も、親友に次いで多いし、東京でのライブにもよく来てくれた。成人後の俺と彼の関係は、俺が一方的にお世話になっている。

高校をやっとかっと卒業し、何をやってもすぐに飽きて、頭の中はピンキーであった彼だが、今ではコンビニを3店舗経営し、社員も数名抱える社長さんだ。

彼の好奇心と、何かに取り組むモチョベーションは、長続きしなかったことが多いけれど、今では社長として、それなりに締めて、それなりにいい加減に、人生を切り盛りしている。
そして、彼のすごいことは、生きる上で迷いがないことだ。いい意味で哲学を持たない。本能に忠実で動物的な生き方なのであるが、下等ではない。すごいと思う。

一方、俺は、未だに人生に悩んでいる。悩んでいるというと高尚だが、たんに、下等に煮え切らないでいるだけだ。高卒の彼、大卒の俺。俗のベクトルで彼との差異を邪に測っていた時期が俺にあったことは否定できない。

だが、今はどうだ。現在の自分を全否定する気はないが、親友と彼の素晴らしさに俺は及ばないと自信を持って言える。生きる上での本当の価値観を、俺は親友と彼から教わっている気がする。大切なことは何だろうか????

対照的な2人が、たまに電話をする。

「お互いに歳をとったな~。」

このセリフが、なんだか現時点で愛おしく思える。歳の取り方は異なるが、ただいつも、ひたむきな青さがお互いにあったことだけは、嬉しく思うのだ。

俺はあと9日後に彼を追って38歳になる。

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