2007年10月6日土曜日

書評①

『夜を賭けて』梁石日(幻冬舎文庫)

梁さんの書籍は数冊読んだことあるのですが、退廃さが僕の好きな感じではなく、あまりのめりこんで、著作をおっかけてなかったのですが、これはテーマが素晴らしい

アパッチ部落について話なのですが、文庫の裏書にもある通り、「戦後50年の総括」という意味では、描写に迫力もあり、戦後生まれの僕らの代が是非読みたい一冊だと思います。

アパッチ部落に関しては、開高健さんの著作等で、数冊調べていたことがあったのですが、この本が一番インパクトありました。

僕は小学生の時から電車にのるのが好きで、いつも窓からの眺めを楽しみに乗っていたのですが、
大阪環状線、片町線(学研都市線)や、京阪電車車窓からの景色には、幼心ながらに、たくましさ、温かさを内包した猥雑さ、錆びた空気を感じました。あれはきっと、まだ復興が完成されていなくて、途上の活力が漲っていた空気があったからだと思います。

今、上記の沿線からの車窓は、一部手付かずで香りを感じるところもありますが、ほぼ隠されていて、文明都市としての誇りだけを漲らせた景色に変わりつつありますな。

いたずらに懐古する気はないですが、ほんとに美しい町の風景とは、生命の息吹が根ざしている、昭和の風景だと思います。今は、どこも無機質でいかんです。感覚がずれているだけかもしれませんが、錆びたトタン、長屋、狭い路地、凹凸だらけの砂利道、田んぼの畦道、これらは壊滅に向けて進行中ですな。いつの日か、お金をかけて、これらの景色を再現して、「昭和博覧会」みたいな行事がなされるのだろうと思いますが、馬鹿げているな~。 仕方ないのかな?? 

話は戻り、『夜を賭けて』。 何が感動するって、汚い言葉に込められた温かさ、むき出しの感性、活力ですな。なくしてはいかん気が・・。 僕の生きている間に総括してほしくないっす。

最後に「アパッチ」って言葉はインディアンの部落名らしいです。この言葉をどうとるか難しいですが、かみ締められる余韻がある響きですな。      

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