2007年10月20日土曜日

美しきバンドマン

僕が立命館大学の音楽サークルに在籍していた時の話。
平成元年当時の部室は、ヘビメタ中心の他音楽サークルと同じ部屋だったのだが、そのサークルの人たちの機材が山積みにあった。マーシャルがびっしり!いくらするのか調べる気にもなれないくらい、学生の身分では手が届かないものだった。

そのサークルの人たちを見ると、みんなエドウィンのロンドンスリムの黒ジーンズを履いて、足がルパンみたいに細い。この細さは単純に栄養主張からくるものであったと思う。
食費を削っても機材を買う! この美しさが崇高に見えた。

崇高な美学を見せられると真似をしたくなるのが常だ。しかし、真似できる器に俺はなかった。
奴らが学食でおかず一皿にご飯を2杯食っている時、俺はハンバーグとピラフと麺類を食っていた。おかずも更につまんでいた。 
奴らが徒歩で通学している時、俺はタクシーを使っていた。それもバス停前から・・・。

俺は金持ちではなかった。むしろ金がなかった。でも、機材を買うお金を贅沢品に回した。
中でもタクシーはめちゃくちゃ好きだった。酒も家では飲まず、店でばかり飲んだ。
そんな俺は、日銭を求めて、日払いの旅館の住み込みバイトを始めた。毎日6000円があたる(途中で6500円になった)。

同じ住み込み仲間にバンドマンがたくさんいた。彼らは朝の仕事を終えると、タコ部屋でギターを練習していた。俺はパチンコに行っていた。その当時の俺は恐ろしいアニマルパワーを発揮して、パチンコでは勝ちまくっていた。常に金を持っていた。
一方、タコ部屋でギターを弾いていたバンドマンは、俺より低サラリーだった。

数ヶ月が過ぎ、低サラリーのバンドマンは、ギターを買った。おまけにバイクも買った。
俺はエロ本を買った。

これが全てである。本当に好きなことをするために、他のことを辛抱することができないのが俺だ。
いや、辛抱というか、俺は世の中の全ての名誉、地位、快楽にミーハーなのだ。だから、全てを味わおうとするのだ。

30代、40代で音楽を続けている人の生活は、実に質素に見えて豊かだ。
しかし、俺の生活は優雅に見えて貧困だ。無駄遣いが多いのであろう。

俺は決めた! 美しきバンドマンになるために、日々の生活をけちって、楽器を買う。
日々の生活をけちって、CDを買う。 日々の生活をけちって・・・。

グリーン車、タクシー、店での飲酒二桁杯、893を見たら無駄に追跡するガソリン代、家で風呂沸かしている日に行く銭湯代、日用雑貨もコンビニで買う癖、下道で行ける時に乗る高速、目つきの悪い馬を買う馬券・・・・。

本音を言えば、こんな俺が美しいバンドマンであってほしい。バンドマンは性格が変わらないものだ。
嫁がここを見るかもしれない。俺に寛容な嫁も、角を生やすかもしれない。この5行は削除するかもしれない。この気の弱さが美しきバンドマンだ。27日はライブ! 俺は9杯でビールを止める。

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