2008年1月13日日曜日

弁当について考える

昨夜は、非常に美味しい居酒屋で、グルメな夜を過ごした。カキフライ、バイ貝の刺身、白えび刺身、鱈の照り焼き、など、腹いっぱい食べたのだが、美味いのなんの! 富山に来て、居酒屋料理で一番美味しいと思った。
店の外観も地味で、カウンターとテーブルが2つ、奥の座敷が15人分ぐらいという、こじんまりとした店なのだが、とにかく美味い。

9時ごろ行ったのだが、魚は売り切れが続出で、残っているものだけを頂いたのだが、笑えるくらい美味かった。ご主人は、任侠臭のする、T吉丈一郎のお父さんみたいな、いかした御仁だ。愛想は恐ろしく悪い。包丁がドスの香りをかもし出す。しかし、手際は見事。惚れ惚れする料理人を久々に見た。

この店の素晴らしいところは、食材勝負の魚介類だけではなく、煮物、和え物も美味しく、遊び心満載の油ものも品揃えしているところだ。
富山ならではの魚を堪能したあと、ウインナーや、ハムフライといった、懐かしのメニューも頼んでみたのだが、油加減も抜群で、申し分ない。

そのウインナーだが、着色料ばりばりの、昔のお弁当のおかずの、あれであった。切り目が入って、イナバウワーのウサギみたいになったウインナーを食して、俺は中学時代の弁当に思いをはせた。

中学生時代が弁当であった俺は、弁当コンプレックスを深く持っていた。俺が一緒に食べた友人の弁当は、どれもこれも素晴らしかった。ごはんと、おかずが、別タッパーに入っていて、ごはんは、のりたまふりかけが、絶妙な量でふりかけられており、おかずは、上記の赤ウインナー、ミートボール、揚げ物、サラダ等、とにかく見た目の色彩が素晴らしかった。おまけに、食後の果実が別タッパーで用意されており、お食事をしているという感じの素晴らしき弁当が殆どだった。

中学生の理想の弁当とは、色彩が全てであると思う。そして、ジャンクなおかずであればあるほど、食欲をそそられ、キッズを魅了する。ハンバーグ、ウインナー、から揚げといった、名前がついているものが勢ぞろいしている弁当であれば、みんなの前で堂々とさらし物に出来る。栄養は二の次である。中でも赤ウインナーは王様だ。

キッズを惹きつけて止まない、友人の弁当と比較して、俺のおかんが作る弁当は強烈であった。

弁当箱はおかずとごはんが一体型の、洋裁箱みたいなデカ箱時代と、おかず、ごはんセパレートの2つ時代があったが、どの時代も、俺は友人の前で弁当箱のふたを開ける時間が怖かった。

ある日、ふたを開けると、白飯に紅しょうがが散らしてあり、おかずコーナーには、粘土色の気持ち悪い物体が2ついた。「がんもどき」と「切干大根」である。色のハーモニーはない。汁が白飯を染めている。ウンキッシュである。育ち盛りであったが食欲は無い。

ある日、ふたを開けると、おかずコーナーが、プール上がりの唇みたいな色に染められていた。「なすび4本」である。なすびは白飯を邪悪に染める。ヤンキッシュである。なすび好きであったが4本は入らない。

ある日、ふたを開ける前から弁当箱を包む布が濡れていた。嫌な予感がした。「あれの日だ・・・」
前夜は水炊きであった。「間違いない。」  ふたを開けると、ギンギンのアルミ箔に包まれた、昨夜の残り物が・・・。弁当に水炊きはあんまりだ。色彩は嘔吐物を連想させる。ゲッシュである。しかし、生きるためには食わなければならない。友が好奇の視線を向ける。

俺は、おかんにクレームをつけた。「汁がごはんを汚すから、汁は入れるな! ウインナーとかあるやろ、ぼけ!」 おかんは、合点がいかない顔をしていたが、その週末にセパレート弁当容器を買ってきてくれた。俺は期待した。拷問のようなランチタイムからの解放を願った。

セパレートデビュー初日! 俺は1つ目の箱を開けた。焼きそばだった。色彩も美しい。紅と青海苔も調和している。俺は満足げに、今までの屈辱を晴らすかのように、友に見せびらかすように2つ目のふたを開けた。

2つ目も焼きそばである。 「お・おかわり????」   友は苦笑した。焼きそば2人前である。食欲は満たすが、セパレートされた意味がわからない。

本当に嫌で仕方がなかった中学時代の弁当生活であるが、今になってみれば、おかんの弁当が懐かしく思える時もある。しかし、本当に辛くて長い3年間であった。着色料まみれのウインナーが常備してあれば、良かったのだ。俺にとってウインナーは赤ければ赤いほど良い。

こんな思いを持ちながら、居酒屋でウインナーを食した。涙が出そうになった。思い出深い日になりそうである。

今の時代は、弁当用のおかずが、スーパーでも完備されており、奥様方にとっても、弁当は作りやすいものになっているのかもしれないが、個性という点では見劣る。

その点、団塊の世代のおかんが作る弁当には、種々の個性がにじみ出ていた。だから、おかんを責める気はない。しかし、その時代でもウインナーはあった。色んなおかずの中に咲く、赤一輪のウインナー・・・、それが当時の俺には必要だったのだ。

そんな、おかんも、運動会などの晴れの日には、工夫を凝らした色彩豊かな弁当を作ってくれた。

弁当箱を開けた。ウインナーはないが、白飯に紅しょうがが、「アカ組 ガンバレ」と配置されていた。俺の欲する赤色を、おかんは紅しょうがで再現してくれたのだ。おかず部分には、トマトの赤も配されていた。トマトが白飯を赤く染めていた。染色禁止令は守られていない。

この時、俺は白組だった。負けた。

弁当は難しい。赤けれ良いというものでもない。何で赤く染めるかということと、白とのコントラストが大事である。もちろんTPOも必要だ。白組の俺が赤い弁当を食すのは、TPOに反している。

苦痛で仕方がなかった弁当生活であったが、今になれば良い思い出だ。

なんともいえない暖かさとせつなさに包まれて飲んだ昨夜であった。おかんをいつか、連れて行ってあげたいと思う。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

なんだか、いい話なんですけど‥(泣)
高校時代、母の弁当にクレームをつけていたことを思い出します。今思うと、なんとひどい娘、、

それにしても。
ほぼ毎日、この分量の文章を書かれるまえけんさんには脱帽です!!

管理猿まえけん さんのコメント...

拙文だらけで、分量を減らす努力をしてるねんけど、簡潔さがない人間やから、だめだわ(泣)

相撲開幕、稀勢の里、人が良さそうやけれど、今場所はやってくれそうやね~。あられちゃんに影響されて、日本相撲史総覧という本を古本で購入しました。