2008年5月27日火曜日

個人情報

塾業界に身を置いて早4年、前職場では、生徒獲得のために種々の活動をしていた。
それらが実にしょぼい。

① DM発送、②電話勧誘、③学校前ビラまき。

会社の方針とはいえ、個人的に①~③全てを糞活動と名づけ、入社早々、上司に文句ばかり言っていた。何度も反論されたが、嫌なものは嫌、というより、こんなくそ活動を生徒獲得手段と考える会社方針に、入社早々疑問を感じ、事あるごとに反抗し続けた。

2年目に校舎長になってからは、自分のいる校舎は断固として上記の活動を拒否し、しょっちゅう部長と衝突していた。

嫌な理由は簡単だ。上記の活動が安っぽくて、一方通行で、生徒指導という仕事の主旨と何一つ相容れないからだ。大きな会社だから、生徒数の増減に敏感になる気持ちも今では少しはわかるが、逆に言えば、こんな活動をしないと生徒を増やせない時点で、その会社は下り坂だと思っていた。だから、当然今の職場では一切上記の活動はしない。しようという発想自体が全くない。

DMにしても、電話にしても、個人情報の獲得の仕方はいやらしいものだ。名簿屋から買うか、生徒にクラス名簿を見させてもらって入手する場合もあった。エネルギーとお金のかけ方を間違えていると思う。

とは言ったものの、俺は、個人情報を勝手に入手して、一方的に営業DMを送りつける行為自体は嫌いだが、自分のもとにDMが届くことには平気である。発信者にはなりたくないが、受信者は苦にならない。不快感もない。

個人情報というものに、世間が敏感になっているから、自ら人々の心情を逆なでする行為はしたくないが、俺本来は、個人情報に大らかなほうだと思う。守秘義務的なものはもちろん守るし、相手の個人情報意識にも配慮する。でも自分自身の個人情報は、あまり気をはっていない。

個人情報に関する意識が強くなりだしたのは、パソコンの普及が大々的なものになってからだと思うが、これもちと行き過ぎ、ヒステリックになりすぎな気がする。

例えば、病院において、患者を番号で呼ぶことが徹底されてきているが、これなんかも、実に無機質で嫌な感じがする。俺はいつも病院に行くたびに、個人情報に関する世間の風潮に疑問を感じる。同じ病気という立場、病院内で個人情報を隠す必要もないと思うし、個人情報と言ったって、名前だけだ。番号で呼ばれるほうが気持ち悪い。俺は識別番号をふられた機械か?

DMにしても、送ってきたところで、ほとんどの場合はゴミ箱直行だ。それを承知で通信費を払って出す発信者にたいして、哀れみの情は抱いても、いらつく気にはならない。迷惑メールは、正規のメールが紛れるから嫌いだが、DMに紛れて正規の手紙を誤って捨ててしまうなんてことは、数量的にもありえない。だから、別に困らない。

どうやって、自分の住所を知りえたかたということに、気持ち悪さを抱くのだと思うが、住所が知られたからといって、具体的に何が困るのだろう? 本当に突き詰めて考えたら、何も具体的には困らないし怖くないのだ。

本来、日本人は昔から相手に対して性善説に基づいて、大らかに行動してきた気がする。日本人に限らないかもしれない。相手が自分に危害を加えたり、不利益をもたらすなんてことを考えて人と接していたら、人的交流は生まれないからだ。

それが、インターネットの普及が性悪説に基づく行動を人々に課すようになった。これも一部の屈折した輩が起こした行動が扇動的にあおられた結果だと思う。

小学3年生まで、公務員官舎である長屋で暮らしていた。その後はマンションで暮らした。どちらもパソコンがほとんど家庭に普及していない時代だ。

この時代は、個人情報に大らかであった。近所の家の家族構成、職業、学力なんかが筒抜けであっても、別に隠し立てする意識も希薄だったと思う。基本的に相手に対する信頼があったんだと思う。こんな時代だからこそ、よその子が悪い行いをしていたら町全体が監視役になれる素地もあったと思う。

今じゃ、隣に住む人のこともしらないマンション生活者が増え、極力、人との接触を拒む環境が整った。そんなに人と接することが面倒くさいのかな?

その一方で、メールの世界の通信量は増えている。個人情報を悪用しやすい環境にあるインターネット上の取引を行う人の多くは、個人情報に敏感な人だという逆接も多く見受けられる。

著名人への実名興味本位記事も減らない。個人情報の尺度が曖昧なまま、ある一面の恐怖感だけが定着したまま、世界全体は何を目的に、どこに向かおうとしているのか、時々不安になることもある。

個人情報は大事だ。大事だが敏感になりすぎる必要もない。人と人との交流がある以上、個人個人の情報を互換させながら、交流の和が広がってきたからだ。迷惑に思えるDMでも、その中に有用と思えるものがあれば、その人にとってそのDMは福音にもなりうる。

個人情報を過度に守りたくなる心境について、しっかり考えるべきだと思う。個人情報を恐れるあまりに組み立てられたシステムで、個人情報を悪用した犯罪が多く起こっているという事実と照らし合わせ、もう少し大らかな日々の到来を期待している。

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