2008年3月17日月曜日

山菜に思う

春になると三面記事でよく目にするのが、山菜取りに出かけて行方不明に!やら、熊に襲われたやら、毒草を食べて死にかけているといったニュースだ。

この前の休日には、山道で車を止め、道脇の草と対峙している人を数人見かけた。
山菜取りマニアは、俺が思っている以上にいるみたいだ。毎年、死者が出ているにも関わらず、草を求めて山道を歩く人たち・・・、落石事故にあう可能性もある。それでも彼らを突き動かす魂・・・、かっこいいではないか。イッツ・ロック!

俺は自然に疎い。キャベツもレタスもチンゲン菜もほうれん草も、全てひっくるめて「葉っぱ」と呼ぶ男だ。山菜なんてものは、全て「草」と呼ぶ。知識がないのだ。そのくせして、独特の苦味を持った山の草がめちゃくちゃ好きだ。

小学校の時、大阪か奈良かわからないが、山道を登った所にある「くろんど池」に、近所のファティーなおばさんに誘われ、行ったことがある。自然を愛でる気概のなかった当時の俺は、くろんど池で乗せてもらったスワンボートだけが楽しくて、帰り道の下山が何より不満だった。

引率してくださったご恩を感じるには若すぎた俺は、山道の一部、舗装された道に出た時、寝転がって坂道を数十メートル転がっていった。

目が回って、服がぼろぼろになり、実の親でもないのに、「この根性なし!」と怒られた。実の子でもないのに、「連れてきてくれ!って頼んだ覚えはない!」と反抗したら、近くに落ちていた枝木でムチ打ちにあった記憶がある。

このおばさんが、山菜フェチだった。不満顔の俺を連れて下山する途中、せりの葉がたくさんあったみたいで、やたら道草をする。俺はいらだちまくっていたのだが、おばさんが、「ほれ、これも全部せりや! あんたもとらんかい! おかあさん喜ぶで!」と煽られるうちに、なんだか楽しくなり、せり以外の葉っぱもひっくるめて、道脇の草を片っ端から引き抜いた。おばさんは、俺が引き抜いた草の中にわずかあった、せりをより分け、ビニール袋に仕分けてくれた。

帰って俺のおかんと、そのおばちゃんが会話しているのを、俺はトイレで盗み聞きした。
「よく頑張ってとってくれたわ。私はなんもせんと、息子さんがほとんどとらはったんやで!」と、俺がすねたことは言わず、ひたすら俺を褒めてくれていた。

おばさんに謝りたい気持ちもあったのだが、言い出せずに夕食になり、俺の戦利品扱いのせりを、家族で食べた。味覚的にも精神的にも苦かった。

こんな思い出のある、せり・・・。 しかし、道端で実際に俺が採取したのはこの山菜だけだ。

タンポポ、タラノキ、ナズナ、アケビ、ワラビ、ゼンマイ、シロツメクサ、イタドリ・・・。他にもたくさん食した記憶がある山菜ではあるが、道端で見かけてもまず見分けがつかない。

ワラビとゼンマイくらいはわかる気がするが、奴らは食べる分には良いのであって、見た目は宇宙人の食事のような気持ち悪さがある。巻き具合が気持ち悪い。

こんな気持ち悪い草を最初に食べて、そこに名前をつけた先人の何と尊いことか・・・。
美味しい草と幻覚作用がある猛毒草と、実際に食べた人がいるから、今の山菜知識があるのだ。人柱のような先人に感謝して草を食べよう。

先日の地方新聞三面記事では、河川敷に生えていた草を、食べた婦人が急激な吐き気を訴え、病院に運ばれたニュースがあった。この婦人、何でも草に関しての知識は豊富だったそうだが、そんな人でも毒薬草を間違って食することがあるこの草の世界・・・。俺には深遠な世界に思える。

有名どころの山菜だけを見つけ、それだけを選別して山道を歩くことなら、今の俺でも出来るのかもしれないが、山菜君は全員が戸籍不明者だ。どこにいるかわからないから、彼らに巡り合う前に、ついつい彼らの親戚に思えるブツも摘みたくなるのは仕方がないだろう。

ある人は、山菜取りに夢中になっているうちに、山深く入り、熊君とご対面を果たすこともあるだろう。長い眠りを終えようかとしている、浅眠中の熊君のご機嫌は、幼児と比してみても容易に想像できる。熊君に会って死んだふりを出来る奴は、戦っても勝てる猛者だ。気を失って仮死にするしか助かる術はないだろう。山菜取りも命がけである。

自分の生活パターンにないから憧れるのかもしれないが、山菜を識別できる人、花や草や木の名前をよく知っている人を見ると、異常なほど尊敬してしまう。幼少時には苦痛以外の何ものでもなかった山歩きであるが、今なら楽しいだろうと思う。

自然の達人と一緒に、色々ご教授頂きながら、1つ1つ自然の生息物の名前を覚えていく・・・。なんて素晴らしい時間だろう。山菜友の会みたいな会に参加してみたいと思いはじめている。

今年は、夏に登山の達人に山登りを教わる予定だ。この方に色々教わり、まずは夏の高山植物から、色々愛でていきたい。愛でるためにはやはり名前を知っておいたほうが良い。夏からはじめ、来春くらいに山菜デビューできたらいいなと思っている。
バンドマン同士が集まって、ゆっくり山道を歩くイベントなんかがあったら楽しいだろうな?と思う。ひとつひとつ植物の名前を呼びながら、へぼ俳句を詠みあうのだ。そして頂でギターを奏で、唄を歌うのだ。いつか計画したい。植物に詳しいバンドマンがいたら、是非是非誘って欲しい。今なら愚図らずに山道を歩けそうな気がする。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...
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管理猿まえけん さんのコメント...

湿地に生息する菌類2件を退治しました。負のエネルギー撒き散らす君に食べて欲しいな~。新種の毒キノコ・・・。