2008年3月8日土曜日

脱薬宣言!

意識が飛ぶ。粉の恐怖が俺を襲う。快感はない。全身の細胞を入れ替えたいような衝動にかられる。被害妄想はない。目の前の光景が歪んでいる。幻覚ではない。

世の中で1番清い粉が飛ぶ。白い粉だ。花粉だ。杉の純度が俺を襲う。

変な誤解をしたやつは、あっちの世界に飛んで、他人に迷惑をかけずに三途へ飛んでくれ。俺はナチュラルな白い粉との戦いを前に気が高ぶっているのだ。以下、化学的な粉でのたうち回る、俺の忌み嫌うジャンキーの精神を推測しながら、俺の花粉格闘バトルと、薬に対する認識を記す。薬に頼ることにかけては、ジャンキーも花粉症患者も似たようなものだ。

アレルギーの総合百貨店みたいな俺の体質は、春を忌み嫌う。時々に襲われる部位は違うが、品を変え手を変え、奴らは襲ってくる。

狸を見かけることが幼少時にはあったにせよ、都会育ちのシチーボーイで、ナウなヤング時代の俺は、花粉の恐怖を今ほど感じていなかった。なぜなら顔面器官に対する襲撃が少なかったからだ。当時の花粉は俺のおべべの内側から襲撃しだした。全身の柔肌がATP反応を示し、襲ってくるアレルゲンに対して、肌を赤らめて対抗していた。襲撃と抗戦の凄まじさは全身に種々の残骸を残した。あるものは抗争で血を流し、俺の木綿の下着をパンキッシュに血染めした。

しかし、血まみれを除いては俺の暮らしに大した影響はなかった。敵の内部に潜り込むという間接的で陰湿な攻撃ではあったが、当時の俺はモダンなATP撃墜ミサイルを装備していたので、惨劇は軽く抑えられた。顔面の器官が麻痺するほどの直接攻撃は受けたことがなかった。

ビッグシテーでの生活は、自然の粉の襲撃をも防ぐほどのモダンポイズンがあちこちにあったので、粉の中でも邪悪の塊みたいな生命力の強いやつも、表立って攻撃はできなかったのだと思う。奴らを育む母体自体が枯れる素地がシテーにはあったのだ。俺の母校の中学は「杉」が冠されていたが、シテーだったのだ。

俺とアレルゲンの冷戦状態は、俺が彼らのお膝元に侵略する、「ドナドナ事変」を気に悪展開をみせる。俺が彼らの聖地近くに侵入した夏ごろは、彼らも俺の動向を伺っていた。しかし、俺が彼らの陣営であるMt.Tate近くにまで秋頃に侵攻すると、彼らの本陣は怒りを顕にしだした。俺はMt.Tate中腹で、放尿と放屁をしたのだ。そして、彼らの可愛げな花子を踏みつけてしまったのだ。

空が黒くなり、そこから舞い降りた白い粉、俺は彼らの攻撃にまずやられた。奴らは俺の戦車を攻撃した。俺は侵攻して4ヶ月目の初めての富山での冬、雪道での運転中、電柱を倒した。その1ヵ月後、溝に転落した。まずは負けた。俺は賠償金を払い、俺の住む町の租借権を彼らに与えた。

それからの俺は、ひたすら低姿勢で奴らに媚びた。奴らを愛でることさえした。しかし、初期の俺の侵略行動への怒りを奴らは忘れていなかった。

暦は3月中旬、俺は襲撃された。急に目が捉える事物がUチャンネルみたいな映像になり、俺の鼻と口から、大魔王を呼ぶための号令がたくさん発せられた。ハックションだ。アクビはない。

俺の本陣の医療チームが、俺の襲撃毒物を丹念に調べたところ、それは「スギ花粉」という、白い粉の中でも純度の高い物質であることがわかった。医療チームは俺に、白には白で!というピースフルな思想に基づいた口当て防御用の防具を俺に与えた。マスクというらしい。

このマスク、防御力はバリバリで、ベホマラー並であった。無敵の防具と薬草を手に入れた俺は、戒厳令が敷かれる中、平気で原野を闊歩した。幸せな日々がそこにはあった。しかし、諸行無常・・・。

防御された鼻と口ではあったが、俺のお目目はしっかり、奴らに襲われていた。そして、防いでいるかに思えた口と鼻を覆うマスクなるブツにも、奴らはしっかり忍び込んでいた。

ある日のことだ。俺は目をやられ、曇った眼でマスクを捉え、装着した。3時間ほど経っただろうか?俺の顔面はパニックを起こした。大魔王を呼ぶブードゥーな号令を俺は連続で発し、体中の水分が全て鼻に集中したかのような、ジャジャ漏れ状態の惨劇を味わう。

ジャジャ漏れの後には枯渇の苦痛だ。鼻が詰まって息苦しい。確実に蝕まれている。俺は涙を垂れ流す眼で防御マスクを外し、よくよく眺めた。俺がカレーを食べた後に吹きかけた黄色の吐息が俺の口面に来ていた。表裏を間違えて装着していたのだ。俺は存分に粉の魔力をラマーズしたのだ。

もだえながら深夜に徘徊し、蛇口にホースを繋ぎ、鼻めがけて放水した。鎮火の変わりに鼻から上が持ち上がるような痛みを味わった。メンソレータムにメンソーレしてもらい、なんとか惨状を逃げ切った。

俺は白旗を上げた。完全に詫びたにも関わらず、彼らは毎年俺を襲ってきた。しかし、俺はマスクをせずに、彼らの怒りを全身で受け止めた。1年に数週間、のたうち回る日々があっても、俺は彼らの攻撃を全身で受け止めた。受けるだけではなく、俺は彼らの陣営に赴き、彼らのお膝元にある、名も無き花々に、1つずつ名前をつけ、彼らを愛でる気持ちを今一度もった。「アイボン」、「フルメトロン」、「ゼスラン」、「アゼプチン」、色々な福音の名前を花々につけ、俺は杉大明神の怒りを静めた。

10年以上かかったが、昨年くらいから、春の嵐の俺への攻撃はゆるくなった気がする。

ここまでが前置きだ。無駄に長い文章を許せ。邪悪な白い粉で苦しむやつらの神経を推測で再現したのだ。擬似トリップだ。

自然の白い粉に、化学的な白い粉や液体で対決しても、長期的には何も得ることがないのだ。俺が薬で花粉対策をしなくなって数年、今の所、すこぶる調子が良い。最初は強烈な攻撃を食らうが、その波状攻撃に耐えれば、後は楽勝なのだ。薬物療法の治療は地獄を見ることで完結される。

白い粉なんて怖くない。恐れる人こそ、1度真剣に対峙してみるがよい。医者は怒るかもしれないが、「花粉症」なんて病名は後学の産物で、杉などの白い粉軍団の親方のは、それより前から存在しているのだから・・・。脱薬宣言! 

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